第3-2話 『飲まない』

 そもそもこんなよく分からない場所であたかも怪しそうな物を「飲んでください」と言われて飲むやつがあるか。どう見ても罠にしか見えない。それにもしこれが本当にただの飲み物だったとして、見た目からして不味そうだ。


「……僕はトマトジュースは嫌いだ」


 僕は小瓶から手を離した。ガラスの割れる音がして、中身は飛び散り小瓶は粉々になってしまった。中に入っていたのはやはり鍵だった。その小さな鍵を偶然ポケットに入っていた白いハンカチで拾い、付いていた液体を拭き取る。


「よし……これでどうかな……」


 鍵穴に鍵を差し込んで回してみる。カチャリと音がした。恐る恐るゆっくり扉を開いて中を覗き込む。


「森……?」


 薄暗くて奥はよく見えないが手前の方に草が生い茂っている。とりあえずはここから外へ出られそうだ。


「人を呼ぶしか無さそうかな……」


 ドアノブから手を離そうとした瞬間、激しい頭痛が襲った。


「いっ……!」


 頭を抑えうずくまる。突然の痛みに目を瞑った。しかし頭痛はすぐに収まったようだ。


「……はぁ……何ださっきの」


 まだくらくらする頭を振り、目の前を確認する。


「扉が……!」


 さっきまで腕一本しか入らなさそうだった扉が人が通れるような大きさになっている。……いや、違う。僕が小さくなっているんだ。テーブルがビルのようにそびえ立ち、部屋も端が見えない程に広くなっている。


「何でもありかよ」


 何はともあれ、これで進めるようになった。僕は深呼吸をし、扉の向こうの世界へ足を踏み出した。

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