第一章 『イン ワンダーランド』 第2話
人は落ちる時、気絶するというけれど、流石にこの高さじゃそこまでではないらしい。上へ流れる景色がとてもゆっくりに感じる。落ちたらやっぱり痛いんだろうな……そんな事を考えているとふと窓に映った僕の姿が見えた。妙にはっきりとその姿が映っている。窓に映る僕と目が合った。すると一瞬にしてぐにゃりと景色が歪む。同時に周りが真っ暗闇になった。夜になったにしては暗過ぎる……何も見えない……。微かにカチカチと時計の音が聞こえる。それはどんどん増えていき、一気に暗闇は晴れた。
「……?!」
一体何が起きたのか理解出来なかった。僕の周りには歪んだ時計やドアなどが宙に浮かんでいた。しかも僕の身体は先程よりもゆっくりゆっくり落ちている。下の方へ目をやる。終わりが見えない……真っ暗だった。
「走馬灯にしては妙だな……」
幻覚にしてはリアルだなと思った。これが走馬灯なら僕の頭は相当おかしい。さっさと終わらせて欲しい。突然がくんと落ちるスピードが増し、また闇に飲まれる。ああやっと死ねる、そう思った。が、どすんと鈍い音をたて、僕のお尻は地に着いた。
「痛って……! な、なんなんだよ……」
じんじん痛むお尻を擦りながら自分の身に起こった事を確認しようと周りを見渡してみた。上を見上げると相当な高さから落ちたのか暗くてよく見えない。床は黒と白のチェックタイルが敷き詰められている。どうやら僕はどこか部屋のような所にいるらしい。更に見渡す。部屋の中にあるのはテーブルと小さな扉のようなものとそれから鏡……
「……んん?」
鏡の中には自分の見慣れた姿が映るはずだ。しかし、そこに映るものは自分ではなかった。白い髪に一筋の黒い髪、青い瞳、絵本から飛び出してきた王子様を連想させるモノクロな洋服……鏡に映る人物は自分と同じ動きをしている。目を擦ってみた。一緒に動いていた。よくよく見ると自分の顔とそっくり。
「あれ……僕じゃん……」
鏡に映る人物を自分だと認識し、更に動揺する。改めて直接自分の格好を見直してみる。さっきは制服だったはずなのに確かにメルヘンチックな洋服になっていた。
「嘘だろ……? うわ、ないわー……だっさ……」
髪や目はともかく、男がこんなフリフリした服恥ずかしくてやってられない。それにしても一体ここはなんなんだろうか。少なくとも夢やドッキリでは無さそうだ。
「あの世にしても狭過ぎるし……とにかくここから出ないと」
テーブルにふと目をやる。よく見るとテーブルの上に小さな小瓶があった。手に取ってみると『Drink me』と書かれた札が付いていた。中の液体は赤い。一方唯一の出口になりそうな小さな扉。だけどもし開いたとしてもこれでは腕一本分くらいしか通る事が出来なさそうだ。試しにドアノブを回してみる。
「開かない……鍵はどこだろう?」
どれだけ周りを探してもそれらしいものは見当たらない。もしかして鍵自体ないのだろうか。
「あるのはこの怪しい飲み物だけ、か……」
小瓶を掲げ少し傾けてみる。すると液体の中に何かが見えた。金属っぽい。多分これが鍵なのだろう。どうしてこの中に……瓶口からは取り出せそうもない……どうしようか
choice
『液体を飲んでから取り出す』→ep.3-1
『小瓶をそのまま割る』→ep.3-2
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