文哉の気持ち
確かに最近、無意識にイライラしていたかもしれない。
だけど、文哉だって勉強や部活で上手くいかなくて悩むこともある。
文哉は高校では陸上部に入っている。
短距離走の選手だけれど最近、タイムが縮まらなくてスランプ気味だ。
フォームを改善してみたりしているけど、なかなかタイムに結びつかない。
それでも心配させたくないから、
「なのに、1ヶ月記念日のことくらいでさ」
「それも、プレゼント交換したくないとか言った訳じゃないし、ただよくわからないから
目に見えて機嫌が悪くなって、それからシュンとしてしまった栞……。
「これじゃまるで、僕が悪いみたいじゃないか……」
何だか面白くない。
だから、いつもなら楽しいはずの帰ってきてからのLINEのやり取りも、普通にはしてたけど、いつもの笑顔の顔文字を最後につける気にはならなかった。
「女のコの気持ちってイマイチわからないんだよなぁ」
ひとりごとを言いながらゴロリとベッドに寝転ぶ。
栞とだって友達同士の時は、こんなに面倒くさくなかったのになぁと思う。
元々、文哉は察しがいい方でもなく、女のコと付き合うのだって、栞が初めてだ。
栞も、そうのはず(文哉の知る限り。うん)
なのに、恋人同士になったら、なんでこんなことでギクシャクした空気になっちゃうんだろう。
今までなら、ちゃんと見えていたはずのお互いの気持ちが霧に覆われてしまったみたいでもどかしい。
確かに文哉は積極的にアレコレと動く方じゃないし、何かを決めたりするのも、あんまり得意じゃない。
だけど、そういうの栞は、わかってくれてたと思ってたのに。
今までだって何かを探したり決める時に、彼女に頼んで任せたことがあった。
そんな時、栞は「それならこっちでやっておくね」と言ってくれてた。
今回だって、だからそういう答えが笑顔で返ってくると思ってたのに。
「なんで、あれくらいで、泣きそうな顔になっちゃうんだよ」
「まったく、人の気も知らないで……さ」
ポケットに入れていたスマホを寝転んだままで取り出してみる。
LINEの着信はないままで、最後は文哉自身のコメントに栞の既読マークだけがついていた。
「なんだよ、なんだよ、意地っ張り!」
寝転んだ横にスマホを放り出す。
天井を見つめたまま、文哉はボンヤリと栞は今、どうしているのかなぁと考えていた。
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