第4話【真実】

前回のあらすじ


赤司を学校で見つけた翔は、入部を賭けた勝負を持ち掛け、赤司と1対1で勝負することになったが。

翔の強さに赤司が途中で諦めてしまった。

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赤司が周りで見ていた皆に、弱気になっていると思われていることを、強く拒否していた。


勉『翔くんが本気を出していないって言うんですか?』

大雅『おいおい。あんな動きしてたのに、まだ上があるっていうのかよ!』


翔はみんなの言葉を黙って聞いていたが、ミアが堪らず声を発した。


『確かに翔は手を抜いていたかもしれないわ...。だけど、1回しか見ていないのに、赤司くんはどうして、翔が手を抜いていると思ったの?』


赤司は悔しそうに、細かく説明しだした。


『翔が最初にしていたドリブルの揺さぶりは10回。そして俺を抜いた時が11回目。俺にしか分からなかったかもしれないが、最初の10回は単なる揺さぶりじゃなかった。完全に俺が反応していた重心とは反対方向に全部揺さぶられていた。それなのに翔は、10点マッチだからかわからないけど、10回だけ抜かずに様子を見ているように見えたんだ。違うか?翔...。』


翔は困った顔をして返事をした。


『確かにその通りで10回確認はしたけど、手を抜いたつもりは無いよ!』


全員が赤司をフォローするように口を揃えて言った。


『それを手加減って言うんだよ!!』


翔『え!そんなつもりは無かったんだよ!ごめん...!』

赤司『あぁ、それは分かっている。そんな馬鹿にしているようなプレイではなかったからね。とにかく、俺の負けだ。』


『んで...。話を割って悪いんだが、入部でいいんだよな?』


滝澤がニコッと笑いながら聞いた。

赤司は悔しそうに、約束していた事を思い出して頷いた。


全員さっきまで緊迫した表情をしていたが、安心して笑みが戻っていた。

しかし、自称観察眼に自信のあるミアは1つの疑問を抱いていた。


『私どうしても気になるんだけど、赤司くんは翔の実力を1回で見極める程のセンスがあるのに、なんでバスケ部に入ることを拒否していたの?』


赤司はその質問に少し答えを渋っていた。


するとそこへ、3年の藤岡が来た。


『練習もやんねぇで何やってんだ?』


『おぉ藤岡!今バスケ部にもう1人の入部者が来たところだ!』


滝澤が藤岡にそう言うと、赤司が藤岡と言う名前に食いついて反応した。


赤司『藤岡先輩!?何でこんな所に居るんですか?』

藤岡『なんだ赤司か。お前こそ何でこんな所に来てんだ?』

翔『え!?2人は知り合いなの?』

滝澤『もしかして藤岡が言ってた県選抜に一緒に選ばれていた後輩が来るけど、プライドが高いから入部しないかもって言ってたのが赤司のことか?』

赤司『ちょっ!俺はそういうプライドは有りませんよ。』


大雅『そんなことより2人とも県選抜上がりなのかよ...。自信無くすぜ。』

勉『大雅くん?ここにいる人全員味方ですよ!?』

誠也『確かに!味方だから頼もしいし、普段の練習からそんな上手い人たちと出来るのはありがたいことだよ!!』

大雅『いや、そうかもしれないけどよ~?』


『何言ってんだ?こいつもその県選抜に選ばれてたんだぞ?』


藤岡が滝澤の方を向いて指を指した。


滝澤『いや俺は選ばれたにも関わらず、怪我をして先月までリハビリ生活をしていた、ただの馬鹿だよ。あははw』

ミア『怪我で未出場だった4番ってまさか...。』

藤岡『その通りだ。まあその練習に一度も出てないから知ってるやつも少ないだろうけどな』

ミア『あ、そうだったんですね。』

滝澤『まぁそうは言ってもサボってたわけじゃないからな!やれる範囲ではかなり練習してきたつもりだよ。』


翔『藤岡先輩と赤司は、試合に出てたんですか?』

ミア『ちょっと翔!そんなの聞く事じゃないでしょ!』

藤岡『俺は出れなかった』

赤司『俺は藤岡さん達が居なくなった後は出てたよ。』

藤岡『まぁ出れなかった事に文句も疑問も抱かなかったけどな。』

滝澤『俺も4番で選ばれていたとは言え、怪我をしていなくても出れていた保障は無い。それほど化け物が集まっていた。』

赤司『あの代はほんとにレベルが違いましたからね。正直、翔レベルでも通用するかどうか分からないくらいだよ。』


赤司のその発言に、全員が驚きを隠せず、言葉を失っていた。


翔『何でみんなそんなに動揺してるの?相手が誰だろうと、俺たちは全国行かないと、廃部になるんだよ?』

ミア『そうかもしれないけど、翔の知らない凄い人達が、これから先たくさん出てくるのよ?』

翔『確かに簡単じゃないことは分かってる。けど、ここにはこんな凄いメンバーが、集まってるんだ!必ず勝ち進めるよ!』

滝澤『翔の言う通りだ!このメンバーなら必ず行ける!』

大雅『よーーし!!こうなったら猛特訓だ!』

勉『大雅くんが言うと締まりませんね...。』


『ぶははははは!!』


全員笑っていたが藤岡は赤司に少しキレていた。

藤岡は皆から少し離れたところに赤司を呼び出した。


藤岡『おい赤司!このチームの基準は翔なのか?』

赤司『いやそういうつもりじゃないんですが。』

藤岡『翔はジュニアすらしてなかったんだろ?』

赤司『先輩も1対1やれば少しは俺の言った意味が分かるかもしれませんよ』

藤岡『そこまでお前に言わせる程ならもういい。』

赤司『皆には翔でも厳しいって言ったけど、翔ならあの人を超えるかもしれませんよ』


藤岡は少し不満そうにしながらも納得してコートに戻った。

2年の涼もそこへ来て全員が揃った。


滝澤『じゃあ赤司、改めて自己紹介してくれ!』

赤司『はい!1年の赤司 春斗です!身長は160で体重は45くらいだと思います!ドライブとパスが得意です!』


翔『やっぱり!』

大雅『どうしたんだ翔?』

翔『いやぁ、さっきの1対1で赤司のドライブ体験したからさ!』

赤司『悔しいけど素人のディフェンスくらい抜けて当然だから!』


翔『まぁそれもそうだよね。ディフェンス苦手だから教えてください...。』

赤司『ディフェンスなら藤岡先輩の方が勉強になると思うよ!』

藤岡『赤司てめぇ余計な事言うんじゃねぇよ!』


滝澤『おいおい!可愛い後輩なんだからちゃんと教えてやれよ?せーんぱい?w』

藤岡『お前ら覚えとけよ。…てか、ディフェンスなんか適当にボールが行く方向を読めば何とかなるだろ。』

翔『なるほど…要するに先読みって事ですね!その手があったかぁ。』


この時、翔の言葉に赤司は鳥肌が立った。


オフェンスの動きを見て反応して、ディフェンスが対応出来るのには限界が有り、どんな一流のプロ選手でも至難の業なのだ。

それなのに、先読みする事を知らない翔に、赤司が得意なドライブを、最終的にはターンして交わしたとは言え、ターンする前に1回目は正面から止められていた。


ミア『翔はディフェンス練習してなかったもんね。いつもボール持ってたし』

滝澤『良いじゃないか!出来ないとか苦手な事があるなら伸び代がまだまだあるって事だ!』


大雅『流石キャプテン!俺もその言葉に救われた気がします!!』

勉『珍しく正解ですね大雅くん』

大雅『なんだと?どういう意味だよぉ!?』

誠也『大雅はいじられキャラ安定してきたね!w』

大雅『そんなキャラになったつもりわないー!!』


ミア『チームの賑やかしキャラはとても大切な存在だよ!』

大雅『どんどんいじってこいやぁ!!』


『ちょろい...』


全員が口を揃えて言っていた。


滝澤『よし!人数も集まった事だし練習するぞぉ!!!!』

全員『しゃあぁ!!』


ミア『ちょっと待ってください!』

全員『???』

ミア『キャプテン!練習メニューや、スケジュール管理のノートとかって有りますか?』

滝澤『あ、あぁ。いちをあるよ!…これ。』


ミア『…なるほど、私達バスケ部が全国大会に行くために練習出来る日数は、あと...3ヵ月くらいですね。』

滝澤『それがどうかしたのか?』


ミア『そうですね...』

大雅『分かったかも!3ヵ月もあるから練習メニューどうするか悩んでるのか!』


大雅はドヤ顔をしていたが、いつも通り勉が釘を刺した。


勉『大雅くんはほんとに空気が読めませんよね。』

大雅『えぇ!!?』

ミア『3ヵ月は長く見えるけど練習時間や、練習試合の時間だけで見てみるとかなりあっという間なのよ...』


翔『滝澤先輩!お願いがあるんですけど、いいですか?』

滝澤『ん?改まってどうした?』

翔『この部の練習メニューや日程を全部ミアに管理させてくませんか?』


ミア『ちょっと翔!!』

藤岡『てめぇ...この日程表に文句があるのか?』

翔『いいえ違います!俺は今までミアが決めた練習方法や紹介された先生のもとで練習してきました。』

藤岡『だから何だってんだよ』


滝澤『分かった、いいだろう』

翔『ほ、ほんとですか!!?』

藤岡『おい!正気か?話最後まで聞かねぇと...。』


滝澤『あぁ。しかし、最終判断はそのメニューと予定表を全員が見て、全員が納得すれば、そうしよう。流石にいきなり、はい分かりました。それじゃ気が済まないやつも居るからな...』

藤岡『あたりめぇだろ。アホか...』


ミア『分かりました!明日持ってきますので、今日はこのままの練習メニューで全員の動きの特徴などたくさん見させてください!』

滝澤『明日でいいのか?そんなすぐに用意しなくても...』

ミア『いいえ!全員の管理を含め、大会まであと3ヵ月くらいしかないので、できるだけ早いに越したことはないと思います。』


藤岡『チッ、今年の新人はどいつもこいつも舐めやがって...』

滝澤『まぁまぁ、いいことじゃないか。高い目標に向かって、前のめりな姿勢...』


『よし、じゃあストレッチするから、ペア組んで俺たちの真似してくれー!』


滝澤の声でペアが別れた。


滝澤と藤岡

涼と誠也

大雅と勉

翔は目を輝かせながら、赤司とペアを組んでストレッチをしていた。


赤司『なぁ翔?』

翔『なに?』


赤司『翔はいつからバスケを始めたんだ?』

翔『物心ついた時から、死んだ父さんの試合動画が好きで、バスケを見てはいたんだ...。けどまだ幼かったから、父さんはバスケで死んだんだ。って、勝手な恐怖心を持っちゃっててね...』


赤司『あ、ごめん。嫌な過去を話させちゃったな』

翔『でも、半年くらい前に、幼馴染のミアがバスケをしているのを見て、どうしてもやりたくなって、やっと決心したんだ。父さんを超えるって。』


赤司はまたしても驚ていた。


『ちょっと待って?は、半年前なの?』


『え?そうだけど...?』


赤司の拍子が抜けた声に翔も驚いていた。


赤司『もしかして...って思ってたけど、翔のお父さんって...』

翔『うん。空野 光(そらの ひかる)だよ』


『まじか!!』


赤司のびっくりした声に大きな声で、全員がその事に気付いて、驚いていた。


翔の父は、バスケをしている日本人なら、全員知っているほど有名だった。

何故なら、日本代表のエースで過去最年少で代表入りを果たし、あのNBAに最も近い選手だと言われていたからだ。


大雅『なんで隠してたんだよぉ?』

翔『俺は父さんの子。って言われるのが嫌なんだ。』

ミア『翔...』

翔『俺は誰かの○○とかじゃなく、1人の選手で在りたいんだ。』


滝澤『よく言った翔!』

藤岡『素人のくせに言うじゃねぇか』


大雅『ごめん翔。俺...』

翔『いいんだ、慣れてるから。そんなことより早く練習を始めよう!』

勉『正直、驚きましたが、切り替えですね!』

赤司『あぁ、そうだな』


滝澤『じゃぁ練習始めるぞぉ!まずはランニングー!』


『おうっ!!!!』


全員が気合を入れた掛け声と共に練習を始めた。

そして、練習が始まったコートの端で、ミアは全員の動きを確認しながら、何かを必死にメモしていた。


あっという間に時間は経ち、翔たち1年生の初めての練習が終了した。


大雅『だぁ~もうだめだぁ...。』

勉『ぼ、僕も限界です~』

誠也『もうこれ以上走れない...』


『先輩!もう終わりですか?』


3人が弱音を吐いている中、翔と赤司が口を揃えて滝澤に質問した。


『流石元気だなぁ、少しだけなら残ってもいいぞ?』


『だめですキャプテン!』


ミアがすぐ止めに入った。


滝澤『どうしたんだ?』

ミア『翔と赤司くんが練習したいのは分かるけれど、過度な練習はおすすめできません!』


ミアがこの時、かなり真剣な顔をしていたため、翔と赤司は何も言わずに靴紐をほどき始めていた。


滝澤『じゃあ今日はこれで終礼始めるから、全員集まってくれ!』

大雅『先輩!終礼って何するんですか?』

滝澤『簡単に説明すると、ミーティング的なやつだよ』

大雅『おぉ!かっけぇっす!!』

滝澤『そ、そうかぁ?w』


滝澤『まぁ今日は初日だし、明日の予定を少し伝えるだけだけどな』

ミア『すみません!私から少しいいですか?』

滝澤『あぁ!もちろん!』

ミア『この紙に、全員記入して明日の部活に持ってきてください!』


ミアが全員に配った紙には、コート半面の図が書かれているだけのヘンテコな紙だった。


滝澤『これに何を書けば?』

ミア『自分が思う、本当に得意なエリアを、好きなように、分かりやすく塗り潰してきてください!』

滝澤『なるほど。分かった!全員忘れないようにな!』

全員『はい!』

滝澤『他に何も無いようなら解散する!......じゃあ解散!』

全員『お疲れさまでしたっ!!』


こうして最初の練習日が終わった。





つづく…


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