第2話【秘密】

前回のあらすじ

中学へ入学して、ようやくバスケ部に入部。

しかし、バスケ部キャプテンから、

バスケ部が廃部になる事を聞かされた。

____________________



『えぇええ!!!廃部って…』


それを聞いたバスケ部の全員が、同時に驚いた。


『ちょっと待ってください!どういうことですか?廃部になる理由はなんですか?』

翔とミアが、焦りながら滝澤を問い詰める。


滝澤『まぁまぁ、落ち着け。ちゃんと順を追って説明するから。』


ようやく全員が少し落ち着き、滝澤が話を進めだした。


『俺は呼び出しで職員室へ行ったんだ。しかし、ここからが本当に悪夢を見ているようだった。』




トントントンッ!!


「バスケ部の滝澤です!失礼します!」


その声を聞き、すぐに強面教師の加藤が来た。

「おぉ、来たか滝澤。校長室へ行くから付いてきてくれ。」


滝澤は戸惑いながらも、加藤の後ろを付いていった。そして校長室に着いた。

しかし、加藤は部屋の外へ出ていった。

校長が滝澤を席へ誘導して座らせ、話を始めた。


「いきなり呼び出してしまってすまないね。けれど、大事な話があるのだよ。

今から言うことを最後まで、落ち着いて聞いてくれると助かるよ。いいかい?」


「は、はい!」


「1学期をもってバスケ部を廃部にしようと思っている。それには…」


滝澤がすぐに話を止めた。


「え!?ちょっと待ってください!」


「まぁそう慌てずに、最後まで話を聞いてくれるかね?」


校長が滝澤を落ち着かせようとした。


「……はい。」


滝澤が少し落ち着きを取り戻し、校長は話を進めた。


「バスケ部は、現在人数不足で、大会などの実績が少ない。そこで、職員会議でも、廃部にするのは勿体ないが、最近バレー部の人数がかなり増えていてね、そちらに力を入れると言う方針になってしまったのだよ。本当に残念に思っているよ。」


校長が悔しそうに説明すると、滝澤は、涙を堪えながら言った。


「そう言う事なら、人数を集めて、大会でめちゃくちゃ活躍すれば、問題ないって事ですよね!?」


校長は正直に滝澤の質問に答えた。


「まぁ、そうだね。しかし、猶予は今学期までに決まっているし、そう簡単にこの現状は覆らない。しかし、残りわずかでの活躍を期待しているよ。」


「分かりました。ですが約束してください!!!僕達バスケ部が、全国大会出場をすれば、廃部にしないと!!では練習があるので、これで失礼します!」

滝澤は顔を拭いながら急いで体育館へ向かった。


「本当にすまない。しかし、わたしも前はバスケをしていた身として、本当に心から応援している…」

校長も頭を抱えながら、ため息をついていた…





『…てな感じだ。』


滝澤は落ち込みながら話し終えた。



『ってことは先輩!!なんの問題も無いじゃないですか!ははははは』

笑いながら1年の川野 大雅が言った。


滝澤が驚きながら少し怒りっぽく質問した。

『なぜそう言い切れる?』


翔『大雅!良いこと言うじゃん!俺も同じ意見だぜ!』


翔と大雅は、ハイタッチを交わした。


ミア『あんた達、いいから説明しなさいよ!』


大雅が説明しようとした、

『大雅が言ったのは全国大会優勝するから、その条件は通過点に過ぎないし関係ない!って事ですよ滝澤先輩!』


大雅『おい!俺の決めゼリフ取るなよ翔ー!!!』


滝澤が2人の言葉と様子を見て、笑いだした。


『ぶっははははは!!!』


『いやぁ、情けない姿見せちまったな。お前らの言う通りだ!全国大会出場して優勝すればなんの問題もねぇよな!』

滝澤の目から、くもりが消えた。


『だけど待って!』

ミアが釘をさして勢いを止めた。


翔『なんだよミア!今良い雰囲気じゃん!』


ミア『もういいから聞いてって!…バスケ部の人数不足に変わりは無いわよ?3年生2人、2年生1人、1年生4人、計7人しかいないじゃない!』


大雅『ミアちゃんそれがどうかしたの?』

勉『大雅くん…ルール知らないんですか?』

大雅『な、なんだよ勉!バカにするなよ!』


翔『あっ...!8人居ないとダメなんだっけ?』

大雅『そ、その事かー!あーそれね!はははははー。』


滝澤『その事忘れてたな。だけど諦めずに後1人は、全員で探そう!まだ、バスケ部に入ってくれる奴がいるかもしれない!』


翔『俺は隣町から入学したから、この学校に知り合いが居ません...みんなは心当たり無いの?」


誠也『俺、心当たりあるかも!明日聞いてみとくよ!』

大雅『さすが誠也!体格と言い、こんなことまで頼もしいな!』

勉『上手いふうに大雅くんが言うと、つまんないから辞めてください…。』


『ぷっ...ぶははははははははは!!!』

全員が一瞬だけ、人数不足の事を忘れて笑った。大雅だけは悔しがっていた。


滝澤『よし、とりあえず今日はこの辺で切りあげよう!人数不足に関しては全員で心当たりのある奴に片っ端から声を掛けて行こう!

じゃあ、改めて明日から皆よろしくな!

解散!!』


『お疲れ様でしたぁ!!!』

全員の声が体育館に響いた。



『翔!ちょっと置いて行かないでって!』

ミアが慌てて自転車に跨り翔を追いかけた。


ミア『ねぇ翔。人数揃わなかったらどうするの?』

翔『ん?その時はその時だよ。』

ミア『なによそれ。バカみたい。』

翔『ならミアは、人数揃わなかったらどうすんだ?』

ミア『そりゃぁ…その時はその時よ。』


翔は鼻で笑ってから、言った。

『だから、考えても仕方ないんじゃない?』


ミア『そうね。たまには良いこと言うのね。』

翔『っるせぇよ!いつもだよ!』


そう言って2人は笑いながら帰っていた。



ダムッ、ダムッ、ダムッ、ザザッ!

ダムッ、シュパッ!!...コトントントン……


翔たちは、帰り道の公園から聞こえて来た音を聞き逃さなかった。


ミア『翔!今の聞こえた?』

翔『あぁ!もちろん。』


『綺麗なリズムと綺麗なシュートの入る音』


2人は口を揃えて言いながら、音のした方へと向かった。


そこには、同年代くらいで身長も同じくらいの少年がいた。


翔『すみません!バスケ上手いですね!』

???『だれ?』

翔『俺は翔!こっちがミア!』

ミア『どうも!』

???『なんの用?』

翔『いやぁ、たまたま通りかかったら、同い年くらいの人がバスケしてたからつい!ははは』

???『君もバスケしてるの?』

翔『やってるよ!』

???『そうなんだ、頑張ってね。』

翔『あ、ちょっと…!』


少年はすぐに帰っていった。


ミア『あの人、どこの中学なのかな。試合当たると、苦戦しそうだね。』

翔『いーや、苦戦はしないと思う』

ミア『勝てるの?』

翔『そうじゃない』

ミア『どういう事?』

翔『あ!もうこんな時間じゃん!早く帰らないと母さんに怒られる!』


翔が明らかに何かを誤魔化そうとして走り出した。


ミア『ちょっと翔!説明しなさいよ!!あと、なんでいつも置いて行くのよぉ!!』


翔は登下校中に、トレーニングとして普通の人より倍くらい早いスピードでランニングをしていた。

翔のランニングは、自転車で追いかけるミアでもなかなか追いつけないくらい早かった。



翔『ただいまぁ!』


『おかえり!ご飯できてるから手を洗って着替えて来なさい。』


リビングから母の声が聞こえた。


『おじゃまします!』


翔『え?なんでお前上がってきてんだよ!』


後ろからは、ミアが緊張した様子で玄関へ入ってきていた。


ミア『なんでって…』


翔はかなり驚いていた。


『あら、ミアちゃんもおかえり!今日からよろしくね!何か困ったらすぐに言ってね。』


母がミアの声を聞いてリビングから出てきた。


翔『え!?今日からよろしくって、母さんどういう事だよ!何も聞いて無いんだけど!』


頭の回転が早い翔は、そう言いながらも廊下に積み上げられた、ダンボール数箱が目に入ると、だいたいの状況を察した。


母『とりあえずご飯冷めちゃう前に食べないと勿体ないから、早く着替えておいで。』


母の言葉に従い着替えなどを済ませ、豪華なご飯が並んだテーブルへ向かい、2人は並んで座った。


翔『なんで俺の横に座るんだよ!』

ミア『仕方ないじゃない!お母さんの横だと余計に緊張するでしょ!』


母も準備を終わらせて、2人の向かい側に座った。


母『2人とも!中学校入学おめでとう!これからもバスケ頑張ってね!それと勉強も。』


ミア『はい!ありがとうございます!』


翔は慌てて話を戻した。

『いやいやいや!そうじゃなくて。なぜこうなっているか説明してよ!』


母がようやく説明を始めた。


母『ミアちゃんのご両親が仕事で忙しいのは、翔も知ってるわよね?』

翔『まぁ、うん。』

母『それで、仕事の都合でしばらく東京に行く事になって、ミアちゃんを1人で家に置いては行けないから、昔から付き合いの長い空野家になら、翔と通学が同じだからって、話が来たのよ!』

翔『いやまぁ、なんとなく分かってたけど。ミアはなんで付いて行かなかったんだ?』

ミア『翔みたいなバスケ馬鹿が、どこまで通用するのかこの目で見たかっただけよ。』

翔『俺を心配してたのか?』


ミアは顔を赤くして、少し早い口調で言った。

『違うわよ!単純にあんたの実力を知っているから、それを見たいだけよ!』


翔『それより、部屋はどうするの?空いてる部屋は無いじゃん。』


母『それならもう決めているわ。荷物もあらかた準備したから、あとはミアちゃんが分かりやすいようにやってちょうだい!』


ミア『はい!ありがとうございます!』


翔は2人の、なにか妙な空気に気付き、何も言わずに自分の部屋に走った。



『はぁあぁあああ!!??』


翔は近所迷惑になるほどの大声で叫んだ。

翔が見たそこには、翔とミアが使うスペースの区切りがハッキリとしていた。

翔の荷物は4畳くらいの所へ集められていた。

ミアの布団がベッドに用意され、翔のスペースとの間にはダンボールが数箱重ねられて、仕切り代わりになっていた。


ミアも部屋の様子を見に来た。

『あ、ほんとごめん翔。また間取りは暇な時に話して変えましょ。』


翔『うん。それよりミアは、俺と同じ部屋なんかでほんとに大丈夫なのか?』

ミア『まぁ翔とは幼稚園の頃から泊まったりしてるからなんとも無いわよ?』

翔『まぁ確かに、不思議と俺も平気かも。』


そして2人は、食卓へ戻った。


母『あら、2人とも納得したようね。ふふ』

翔『まぁ駄々こねても仕方ないからね。』

ミア『さっきあんなに叫んでたくせに?』

翔『驚いただけだろ!』


そう言いながら3人は笑って、今日あったことを話ながら晩御飯を済ませた。


その後、テレビをしばらく見ていると母が言った。

『あらもうこんな時間。2人ともそろそろ寝なさいよー。』


『はーい』

2人は寝る準備を済ませ、布団に入り目を閉じた。


しばらくしてミアが声を出した。

『ねぇ翔?まだ起きてる?』


翔『うん。起きてるよ。』

ミア『今日の帰り道の公園にいた人の事で、わたしに誤魔化そうとしてたのって何だったの?』

翔『あぁ、あれか。まだ確信は無いけど、近いうちに分かると思う。しかも、結構良い収穫だったりするかも。』

ミア『そこまで隠して、そう言うなら楽しみにしとく。おやすみなさい。』

翔『おやすみ。』


2人はその後すぐに眠った。





つづく…

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