その5 抵抗

 少しかげのある小学生くらいのオトコノコが校舎こうしゃの前を竹箒たけぼうきで掃除していた。おなどしくらいのオンナノコがしきりに話しかけていたが、何を話しているのかはよくわからなかった。


 私は実体じったいを持たず、つかみどころの無い距離感きょりかんで2人の様子を眺めていた――私は夢を体験するのではなく、場面をながめるような夢を見ることがある。――


 オトコノコが教室で掃除をしていると、いかにもガキ大将だいしょうという感じの男の子が突っかかってきた。国語の時間の声が聞こえないとか、そんな理由だった。オトコノコは抵抗ていこうするでもなく、暴力を受け入れていた。ふと、何を思ったのか、先程の授業で習った国語の教科書の内容を大声でそらんじた。オトコノコがそんな大声をだすとは思わなかったガキ大将は面食めんくらったようで、暴力をるう手を止めた。


 何が良かったのかはわからないが、オンナノコはひどく満足まんぞくそうだった。

 オトコノコは再び掃除をはじめた。オンナノコは嬉しそうにそれを眺めていた。


 ――2018年11月30日

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夢空海 坪井寝るワイゼン @2bowy

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