外伝 圧縮された時間

 たしか頃だったように思う。なかなか寝付ねつけなかった私は映画をることにした。

 アマゾン・プライム・ビデオで『インターステラー』を観始めた。別に面白そうだと思ったからではなく、サイトのトップに表示され出来できが悪くなさそうだったからだ。

 私は不眠気味ふみんぎみで不安に襲われると眠れない事がある。その不安をひそめさせるために音楽をかけたり、映画を観たりするのが当時のブームだったのだ。

 観るというよりもながめるといった方が近いかもしれない。余計なことを考えないように意識に方向指示ほうこうしじをしてやるのだ。

 暫くすると眠気がやってきてくれた。体感的には映画を見始めてから1時間くらいだったと思う。その眠気を逃さぬように気をつかいないながら私は眠りに落ちた。

 夢とうつつ境目さかいめで叫び声を聞いた。

 映画の中から聞こえた声だった。

 またあまり眠れなかったのか、と時計を確認するとだった。

 『インターステラー』の上映時間は2時間ほどなので、5時には上映が終わっているはずだ。シークバーを確認すると四分の三ほどまで進んだところだった。

 世界の時間がちぢまったのか、私の時間がびたのか私に確かめるすべはない。


 ――2019年1月4日

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