夢のかけら
ほのかに甘い匂い、沈んだ気持ちを溶かしてくれた
泣き腫らした私を慰めるような香りのココアはとても温かかった。
「…落ち着いたかしら」
しばらくしてからそう助けてくれた女の人は囁いた。
「はい…ちょっと、泣きすぎて鼻が痛いですけど…」
鼻を抑えながら返事をした。
「そういえば、なまえを言ってなかったです…。なまえはブラン・ルージュです!ブランって呼んでください!」
ブランは慣れなさそうに言った。
女の人はぼそりとブランとつぶやき、パッとブランに目線を向けた。
「…ノワール。ノワール・ベルファムよ。」
とても不器用な自己紹介をしたノワールは再びそっぽを向いてしまった。
「ノワールさん!素敵です!」
ぱぁっとノワールをみて笑顔をする。さっきまで泣いていたのに。笑うブランにノワールは調子が狂った。
「ところで何故あの場にいたのか聞いてもいいかしら。」
紅茶をひとくち飲み、ノワールはそう聞く。
「あ、えっと…わたし、おやしきから抜けだして来て、早く遠くに行こうって思ってたんです。そうしたら不思議なおおきな穴があって、なんだか綺麗で引き込まれて…あそこに…。」
少しうつむきながら話した。
「…穴…?ホールかしら。もしかしてレーヴの…?」
口に手を当て横目に少し考えると、ノワールは目を瞑りブランにこう話した。
「…ブラン。ここは貴方が生きていた世界とは違う。ここは……」
「―心臓の無い者たちの世界よ。」
「―…っ?心臓の…ない?」
ゴクリと生唾を飲むブラン。
「ブラン。あなたはここに居てはダメなの。早く元の世界に帰るべきよ。」
「でも…でもわたしどうやって帰ればいいのか分からないよ!」
…しばしの沈黙。
「…あぁ、そうだったわね…。地下の書庫に行きましょう。」
―連れられた地下の書庫はなんとも広く中心には長く下まで続く螺旋階段がある。
ノワールは天井に向け人差し指をくいっと動かした。
すると並べられていた本たちが一斉に出てき、バラバラとページを捲りブラン達の上には沢山の本が集う。
―多くの本の間から、するりと、手が出てくる。
「もう!!!!!酷いよノワール様ぁ!!!!!何ヶ月僕を召喚してくれなかったです?!?」
と、ノワールの手を掴み勢いよく出てくる、白黒したキツネのような姿で、バラで目を隠している少女がぽんと出てきた。
「呼び出す用事がなかったのよ。意味もなく呼び出しても何も無いじゃない。」
「ちがぁーう!僕はノワール様に会いたかったのですー!!」
はいはいとノワールら素っ気なく済ますと、頬を膨らませ少女はブーブー言う。
ポカンとしているブランは全く状況についていけていない。
すると少女がブランに気付きパッとブランの目の前に来る。
「この子はー??何だかみんなと匂いが違うよー?」
「……。」
ノワールは黙り込む。
「それより、この五月蝿い子は私の使い魔。セシルよ。」
「よろしくねうさぎちゃー!」
「あ、え、えっと、ブラン…です。」
テンションが違いすぎてブランは困惑する。
「本題なんですけどぉーノワール様ぁ、用事があって僕を呼び出したんですよねー?何をお探しでー?」
「そう、ブランを元の世界に戻すために調べたいのだけど。この世界についての本を探し出してちょうだい。」
「おおせのままに〜!」
セシルが手を広げくるりと身体を回転すると、地下にあるはずのない光りが映し出され、虹色の光が混じり合うひとつの本をすいっと寄せ、手に取る。
「こちらが当てはまりましたよお!」
ノワールは本を受け取り、すぐさま内容を探し出す。
「…この世界は4つの国に”夢のかけら”がある。国の最高責任者がそれぞれが持っている。夢のかけらは時に散りばめられたもので時空すらも変えてしまう貴重な品物の1つで…」
「……夢のかけらなら、ブランが戻れるかもしれない。」
forêt Lapin しゃけ @Shakenoko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。forêt Lapinの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます