お外は不思議

後ろを振り返らずに、もしかしたら誰かが気付いて追いかけてくるかも知れないから。


全力で走ったブランはゆっくりと足を止め、げほげほと息を切らしいつ間にか地面にへたりと足が落ちていた。


「はぁっ…はぁっ…ここまで走ったら追いつかれないかな…げほっ…」


屋敷でも全く走らないし、運動なんてやってもいなかったので少し走っただけで疲れがどっとブランに出でいた。

なんなら距離ならば兵の馬を使わなくても追いつくことが出来る。


くたびれたブランは今の自分の無計画な脱出に少し後悔をしていた。

「わ、わたし…ご飯のことも寝る場所ことも何も考えてなかった。…どうしよう…」


一気に帰りたくなり動く気も何も無くなってしまった。それでも、帰ったらきっと外に出たことに怒られるに違いない。そう思うと帰りたくなくなる。その気持ちがブランの頭を交差し、もみくちゃにする。


じわりと涙が溢れ出てくる。自分が一体どうすればいいのか。子供のブランは何一つ解決策は思いつかなかった。

涙を零しながらもブランは立ち上がり、森の先に行ってみる事にした。



よたよたとけもの道を歩いていると

なんとも不自然なが目の前にあった。


「…?これってういてるの?お外ってこんなことがあるの?」

そんなわけない。だけれど1度も外に出たことがなかったブランは誤解をしてしまう。




「……いなくなっちゃうほうがいいのかな。おかあさまもおとうさまも、わたしとおはなししてくれない…。」









「わたし…―」







吸い込まれる力と誘惑する力が引きずってゆく。



気付いた時にはすっからかん。影も形ものです。






―――――――――――――――――――――――




ぼやけた視界には優しかった。

混乱する頭を持ち上げるとそこは灰色の世界でした。 さっきまで居た森とは違い木は枯れ、草はしおれ、カラスは不穏な空気をもたらした。


「ここは…どこなんだろう…。わたし確か何かに吸い込まれて…?あれ…?」


周りを見渡しても先程の大きな穴のようなものは見当たらない。


ブランは雰囲気に圧倒されてしまい、恐怖で震えあがった。


ここは普通ではない。そうブランに言うように。


「う、うぅ…誰か……グズッ…」


一歩の足を動かせず、その場でうずくまって顔を下げてしまう。こうしていてもどうにもならない。



―そう思っていたとき



「そこで何をしているの。」



長くスリムなロングドレスに身を包んだ紅く突きつける瞳の……



「…きれい。」


ブランは涙目で彼女の顔を見てはっきりとそう言った。


「…綺麗…?」


彼女は疑問を抱き睨みつけた。


「貴方もどうせ私の庭の”青い薔薇”を奪いに来たんでしょう?」


彼女はそっぽを向き素っ気なく言う。


「庭の…ばら…?…ちがうの…わたし…わたし…」


ここに居る理由を言おうとしたが、どうにも言えなくて涙目からすっかり泣き出してしまう。


「…そういう訳じゃないみたいね。…ごめんなさい。泣かないでちょうだい。」


彼女はブランに合わせて座り先程とは違い優しい声で呼びかける。


「うぅ…ひっく…」


安心で泣き出したのか、つらさで泣き出したのか。自分でもわからなくなって混乱する。


「落ち着いて、私の屋敷までいらっしゃい。」


優しさに触れたのが初めてでどうにも出来ない。

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