1.天智天皇

秋の田の 仮庵かりおいおの苫をあらみ わが衣手ころもては露に濡れつつ


天智天皇てんちてんのう作と言われている百人一首の最初を飾る歌。


この歌は、恐らくは万葉集まんようしゅうにある「秋田刈る 仮廬かりおを作り我が居れば 衣手ころもて寒く 露ぞ置きにける」という歌が元歌であり、さらに同じく万葉集まんようしゅうにある「秋田刈る (*1)苫手とまて(*2)ゆるなり 白露し 置く穂田なしと 告げに来らしも」という歌と対ではないかと思います。

*1 苫手とまては苫という藁を編み込む時に使う縄

*2 一般には「うごくなり」


稲を刈り終えた後に作る苫を苫手とまてで結おうとするが、そこには冷たい露が沢山ついている……冬だからね、(露が付く穂は刈られてもう無いから藁につくよ)と告げている気がする……

(秋田刈る 苫手とまてゆるなり 白露し 置く穂田なしと 告げに来らしも)


あぁ寒っ!作業してる我の「衣手ころもて」までも露に濡れてるじゃぁないか!

(秋田刈る 仮廬かりおを作り我が居れば 衣手ころもて寒く 露ぞ置きにける)

(秋の田の 仮庵かりおいおの苫をあらみ(編み) わが衣手ころもては露に濡れつつ)


今回の解釈のようにこれが本当にこの二首で繋がっているのか、そして詠んだのが本当に天智天皇なのか、そんなことはこの断片的な歌では知りようもありませんが、冬の始まりを詠んだ季節の歌なのは間違いないと思います。


秀歌テキスト集でもある百人一首ですが、定家はこの歌をどう評価していたのでしょうか。

この後には春、夏、秋、と続くので、もしかしたら季節を詠む歌の例として出したのかもしれませんね。


一般的な歌の意味は秋の歌とされ、「秋の田にある仮小屋のとまの目が粗いので衣が露に濡れてしまった」という感じに解釈されています。

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