プロローグ~Sei side~

 私は……何かに縋りたかったのかもしれない。希望を持ってみたかった。本当は死にたくなんてない。


「……ねぇ、私は本当にあの未来に辿り着けるかな」

「君は努力家だ。 僕は君がここに来た時点で全ての人生を知っている。 君なら必ずあの未来を迎えられるって信じているよ」

「そっか。 私……もう少し頑張ってみたい。 だから……生きるよ」

「……うん。 僕は君の事ずっと見ているよ。 もしまた挫けそうになったら目を閉じて、深呼吸をしてみて。 見えなくても感じなくても僕は側にいる。 君は一人じゃない」


 セイがそっと手を差し伸べる。私はセイの手を取った。小さいけれどあたたかくて優しい手。私が今から戻る現実は変わらないのに、この手を握っていると何故だか勇気が湧いてきた。


「ありがとう……私今度はきっと負けないから」

「いってらっしゃい」


 そうして光に包まれた私は意識をそっと手放したのだった──



「あーあ、行っちゃった! あの子、また自殺しようとしたらどうするのさ!」

「その時は……また説得するよ」

「セイってほんとお人好し! 他人を救う事になんのメリットがあるっていうんだよ」

「これは僕の自己満足だよ……これで過去の罪もシノの過ちも流せるとは思っていないけれど」

「せっかくいい感じだったのになぁ……まぁいいや! 今度は絶対ボクのものにするんだからね!」

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