第2話



 ◇◆



 夜叉先輩にまんまと騙されて精神的に追い打ちを食らった後、俺は先輩に連れられて我が家の最寄り駅へとやって来ていた。

 いや、最寄り駅なのだからやって来たというよりは帰って来たと言った方が適切だろうか。



「バイトって、駅近なんですか?」

「ええ。ここから徒歩5分ぐらいかしら」

「へぇ、随分と近いんすね」

「そうね。さぁ、こっちよ」



 先輩がそう言って南口から出て先を進み始める。

 俺の家は北口を出て徒歩10分程なので、学校のない日に通うなら通勤時間は15分程度になるのだろう。



「そういえば今更なんですけど、俺のやるバイトってなんですか?」

「掃除屋よ」

「すみません。お腹が痛いので帰ります。それでは」

「待ちなさい。伏見くんは何か勘違いしているわ」

「本当ですか?」

「ええ。掃除するのはこの世のゴミよ」

「あ、勘違いしてなかったですね。それではご機嫌よう」



 アルバイトを紹介してもらえるというのは願ってもない話だったが、殺し屋紛いの物騒な仕事などはお呼びでない。

 もっとごく普通の事務作業員とか飲食店のウェイターとかだと思っていたのに、まったく恐ろしい先輩だ。



「だから勘違いしていると言っているでしょう。この世のゴミと言っても生活していれば自然と湧く一般的なものよ」

「俺はこの手を血で染めたくないんです。勘弁してください」

「あら、ハウスダスト相手に手を血で染めるなんて、伏見くんは随分と不器用なのね。掃除機もまともに使えないなんて驚きだわ」

「はぁ、そうならそうと最初から言ってください。てっきり冴えないサラリーマンを暗殺させられるのかと思いました」

「そういった仕事が良いのならツテを辿ってみるけれど、本当に良いのかしら?」



 仮に頼めばそういった仕事とやらを紹介してもらえるのだろうか。

 いや、興味本位で深入りしたらとんでもない事になりそうだし、やめておこう。

 今は目の前の先輩に黙って付いて行く方が賢い気がする。



「いえ、普通に掃除機と雑巾で床掃除をする仕事が良いです」

「それならすぐにお仕事を紹介できるわ。良かったぁ、危うくダークウェブでジャックにチャットしないといけないかと思ったじゃない」

「…マジで勘弁してください」

「ふふ、安心なさい。少し大変だけど仕事内容はごく一般的な物よ。給料も時給二千円ぐらいだから相場より少し高いぐらいでしょう?」

「東京都の最低賃金って時給千円ちょいですよ?」

「あら、そうだったかしら? まぁ、契約条件は後でゆっくり話し合えば良いわ。さぁ、見えたわよ」

「え、アレですか?」

「ええ。ね? 駅から近いと言ったでしょう?」



 先輩の言う様に駅からはゆっくり歩いて徒歩5分くらいなのだが、予想していた建物とは別種の建物を紹介された。

 てっきり雑居ビルの一角などに連れて行かれると思っていたのだが、先輩の指差す方向にあったのはそこそこ大きな洋館だった。

 俺の最寄り駅のすぐ近くにこんな建物が建っていたとは驚きだ。



「掃除って、あの洋館を掃除するんですか?」

「ええ。今は一人で掃除しているから、大変らしいわよ」

「へぇ。確かにこの大きさだと大変そうですね」



 洋館は軽自動車を数台並べて駐車出来そうな程広い庭が門を入って直ぐの所に広がり、建物自体も庭よりも広い敷地面積で見たところ3フロアある。

 確かにこれを一人で掃除するとなるとかなりの労力がかかりそうだな。



「ほら、ボーっとしてないで入るわよ」

「勝手に入って良いんですか?」

「事前に連絡してあるから問題ないわ」

「そうっすか」



 夜叉先輩が我が物顏で門の取手に手をかけて庭に足を踏み入り、俺はその後に続く。

 よく手入れされた庭の隅には、英国式の優雅なティータイムで使えそうなテーブルと椅子が置いてあった。



「さてと、ドアノックを鳴らしてちょうだい」

「俺、ドアノックなんて初めて見ましたよ」

「ふふ。伏見くんの初めて貰っちゃったわ」

「下品ですよ夜叉先輩」

「下世話な勘違いを勝手にしておいて失礼しちゃうわ。ほら、良いから早く鳴らしてあげてちょうだい。きっとドアノックが鳴るのを扉の向こうで今か今かと待ち構えているもの」

「それじゃあ…」



 人生で初めてドアノックに触れ、2回ほど鳴らしてみる。

 想像していたよりも重い音が鳴ったが、初めての経験とは言え大した感想も浮かばなかった。

 まぁ、こんなもんだろうな。

 そのぐらいの感想だ。



「下がりなさい。ドアが開くわよ」

「え? 自動なんすか?」



 木製のドアが何の音も立てずに一人でに開き始め、洋館の玄関では一人の女性が姿勢を正して立っていた。

 え? もしかして…



「初めまして伏見様。私は当お屋敷の管理をさせていただいております芦屋と申します。以後お見知り置きを」

「あ、これはどうも。伏見真昼です」

「あら? 伏見くんはメイドを見るのは初めてかしら?」

「はい。初めて見ました」



 優雅なカーテシーと共に芦屋と名乗った女性は白と黒のシンプルで清楚な服を見に纏い、セミロング程度の髪を一つに結って立っている。

 メイド喫茶にいるメイドとは全くの別物だと思わせる程に凛とした雰囲気を感じさせた。



「芦屋。伏見くんはメイドを見るのは初めてだそうよ。抱きしめてあげなさい」

「いや、流石にそれはちくとムリっす」

「ちくと?」

「芦屋は父親が高知県出身らしく、その影響で時々土佐弁が漏れるのよ」

「そうなんですか。ちなみにちくとってどういう意味なんですか?」

「カッコよすぎるって意味よ」

「え? ど、どうも」

「違いますよ。ちくとはちょっとという意味っす」

「あ、そうっすか」

「そうっす」

「ちなみにこの気の抜けた語尾は母親の影響らしいわ。父親の僅かばかりの土佐弁と母親の気の抜けた話し方に幾らかの礼節を足した女が芦屋よ」

「は、はぁ…」



 僅か数秒でついさっきカーテシーを見た時の感想を崩されてしまった。

 多分この人は変人なんだろうな。

 俺の20年弱の人生経験がそんな結論を導き出した。



「さて、ここで立ち話をしていても仕方ないし、さっさと中に入りましょう」

「はい。おじょ…」

「コホンっ」

「--夜桜叉夜様。どうぞ伏見様もこちらっす」

「は、はい」



 芦屋さんがそう言って屋敷の奥に入って行く。

 俺がその後に続き先輩が俺の後に続いて屋敷に入ると、扉がまた一人でに動き出して音を立てずに閉まった。



「何か気になる事でもあるのかしら?」

「気になる事だらけです」

「そう。それじゃあ一番気になる事は何かしら?」

「さっき芦屋さんが夜叉先輩の事をお嬢様って言いそうになっていた事ですかね」

「私が美しいからついそう呼びたくなっただけでしょう」

「そうなんですか?」

「え? あぁ、そうっす」



 絶対適当に返事しただろ。

 まぁ、追求するほどの話でもないからそれでも良いけどさ…。



「ところで伏見くんはアルバイトの経験はあの本屋さんだけなのかしら?」

「あ、はい。そうですね。あの店だけです」

「あの店、軽く食事も出来たわよね? 伏見くんも料理はできるのかしら?」

「バイト先では本に関する仕事だけだったんでなんとも言えませんけど、一人暮らしなんでそれなりには出来ますよ」

「ですって芦屋。これなら文句ないでしょう?」

「はい。とは言え、私が反対してもどうせ採用するつもりなのですよね?」

「まぁ、そうね。折角伏見くんがうちで執事をやるって言ってくれたんだもの。貴女の意見なんてそこまで重視していないわ」

「そっすか……」



 芦屋さんが露骨に肩を落としながら二階に上がっていくらか廊下を進んだところにあったドアを開ける。

 どうやらその部屋は応接室らしく、足の短いソファとテーブルが置いてあった。



「……って、ちょっと待ってください。俺のバイトって夜叉先輩の家で執事をやる事なんですか?」

「ええ、そうよ。雇用主は私で上司は芦屋、仕事内容はこの屋敷と掃除と夕飯を作るお手伝いよ。シフトは特にないから、伏見くんの都合に合わせてちょうだい。分かったらこの書類にサインを」

「嫌です。先輩の家で執事とか無理です。帰ります」

「あぁ、そうそう。言い忘れていたけれど、時給二千円というのは基本給で、良い働きをすればボーナスも出るわ」

「帰ります」

「夏はモルディブの別荘で慰安旅行、冬はオーストリアの別荘でサンタクロースとサーフィンをするイベントもあるわ」

「かえ…ります」

「それと、伏見くんが望むのなら私のベッドに住み込みでも良いわよ」

「それじゃあ帰りますね。おつかれっしたー」

「お待ちください伏見様。屋敷に入った時点でお嬢様の許可なしに扉は開きませんよ」

「そんなハッタリにかかるわけ無いでしょう」



 俺はそう言い残して部屋を出て廊下を引き返し階段を降りる。

 そうして屋敷を出るためにドアに手をかけたのだが…



「マジで開かないんかい」



 --芦屋さんの言う通り本当にドアは開かなかった。



「それじゃあ窓から………開かないし」



 一階の廊下にある窓から出ようと考えて取っ手に手をかけたのだが、窓はびくりとしない。

 特に鍵がかかっている様子はないのだが、全く開きそうになかった。

 こうなったら窓を割ってでも逃げ出してやろうかとも考えたのだが……



「NIJ規格の防弾ガラス…初めて見たわ」



 窓の下の方にアメリカの司法省認可である事を示すアルファベットと数字が記されている。

 こんなの人間が素手で割れる様な代物ではない。

 そんな残酷な現実をなんとか受け入れ次の一手を考えていると、夜叉先輩が芦屋さんを連れて俺の元へやって来た。



「諦めはついたかしら?」

「いえ。まだ俺には正義の味方お巡りさんが……圏外……」



 この屋敷は駅から徒歩数分だし住宅街のど真ん中にあるため決して圏外になる様な場所ではない。

 考えられるとすればジャミングだが、そんなの一介の大学生にはどう対処すれば良いのか検討もつかなかった。



「契約書にサインしたら出してあげるわよ」

「い、嫌です」



 この場は契約書にサインしてこれ以降先輩の家には近付かなければ良いかとも考えたが、そんな事をしたら今度はガチで監禁されそうな気がする。

 俺は彼女を信頼している。

 夜叉先輩はやる時はやる女だ。



「それじゃあ今日からここで一緒に暮らす事になるわね」

「あぁ、もう監禁されてたのか」

「監禁だなんて人聞きの悪い事を言わないでちょうだい」

「それじゃあ出してください。まさか芦屋さんも監禁されて…」

「いえ、私は18時が定時なんで今日はその時間で帰るっす」

「あ、そうっすか」

「そうっす」



 何故そこでドヤ顔をするんだ。

 表情筋は死んでいそうなのに、ドヤ顔だけは達者だな。



「そういう訳でそろそろサインする気になったかしら?」

「どういう訳なのか分かりませんけど、夜叉先輩が雇い主とか絶対に嫌です」

「夜叉先輩?」

「伏見くんったら、私の事を夜叉先輩って呼ぶのよ。私はいつも夜々先輩って呼ぶ様にお願いしているのに」

「なるほど。確かにお嬢様は夜叉もかくやという人物ですし、なかなか的を射た…」

「あァ!?」

「いえ、なんでもないっす」

「そう、なら良いわ」



 芦屋さんが夜叉先輩にドスの効いた声で脅されて頭を下げている。

 こんな圧倒的な縦社会を見せられてそれでもここで働きたいと思う人などいるのだろうか。



「仕方ないわね。伏見くん、ここで私の執事をしてくれるのなら好きな物を買ってあげるわ。あまり物で釣るのは嫌なのだけれど、そうでもしないと働いてくれそうに無いんですもの」

「いや、特に欲しい物は無いんで結構です」

「あら、エロ本10年分とかでも良いのよ?」

「結構です。エロ本は自分で買うからこそ意味があるんです。仮に思っていた物と中身が違っても、自分でお金を出して買ったからどこか愛着を感じてしまう。そんな男のロマンが詰まったのがエロ本なんです。それなのに俺にエロ本を買い与えるとか先輩は俺をナメているんですか?」

「ええ。凄くナメているわ。というより、今もっとナメるようになったわ」



 やれやれ、エロ本のロマンが分からないとは困った人だ。

 なまじ美人なだけにエロ本なんか人生に必要無いと断じてしまう寂しい人間なのだろう。



「なんだか失礼な事を考えているようだけれど、学校帰りに週一回働くだけで月収5万円近く稼げるのよ? こんなに好条件なバイト他に無いでしょう?」

「それはそうですけど、先輩の部下になるっていうのがちょっと…」



 別にそこまで嫌な訳では無いのだが、なんだか負けたような気がしてしまう。

 これは俺の信条というかこだわりみたいなものだから理屈では無いし、いくら先輩が上目遣いでお願いしてきても受け入れる事なんて…………



「何してるんですか?」

「伏見くんがなかなか首を縦に振ってくれないから色仕掛けでもしようかと…」



 夜叉先輩が自分のスカートに手をかけてフックを外してチャックを下ろし、黒いタイツに包まれた綺麗な脚を露出しようとしていた。

 俺の心臓はその光景を見た瞬間に高鳴り始め、体温をガンガン上昇させていく。



「マジで勘弁してください。そういうのが怖いから首を縦に振れないんですよ。どうせここでバイトする様になったら何時間も俺を誘惑するつもりなんでしょう!?」

「あら、私は仕事をしっかりしない人に給料を払うつもりないし、真面目に働く伏見くんの邪魔をするつもりはないわよ?」

「え? そうなんですか?」

「当然じゃない。ねぇ、芦屋?」

「はい。私の部下として働くからには厳しくいくっす」

「だそうよ? それとも伏見くんは何だかんだ言いつつも私に可愛がってもらいたかったのかしら?」

「いや、それは無いっすね」

「即答なのね。まぁ、良いわ。それで働いてくれる気になったかしら?」



 正直なところ時給2千円というのは給料をさほど気にしない俺からしても惹かれるぐらいには大きいし、勤務地にも何の文句はない。

 仕事内容は実際に働いてみるまでわからないが、掃除と料理の手伝いというのなら俺でもこなせる範囲のはずだ。

 懸念点は俺の雇い主である夜叉先輩ただ一人なのだが、バイト中は邪魔はしないと言っている。

 これなら働いても良い……のか?



「あぁっと、それじゃあ試用期間をください。もしかすると俺がとんでもなく使えないかもしれませんし、その方が良いでしょう?」

「私が人を見間違える事は無いけれど、伏見くんがそれで働いてくれるのなら構わないわよ。芦屋はどうかしら?」

「今時のバイトに試用期間なんてもの必要無いと思いますが、お嬢様がそうおっしゃるのであれば問題ないっす」

「それじゃあ決まりね。それじゃあはい、これにサインしてちょうだい。仮契約書よ」



 夜叉先輩がそう言ってクリップボードに挟まれた仮雇用契約書と万年筆を俺に手渡す。

 仮契約書はたった今先輩に(仮)と書かれた急ごしらえの物で、それ以外は雇用主である先輩の名前と俺の名前の記入欄がある酷く簡素なものだった。

 まぁ、契約書だなんて大仰な形式をとってはいるが関係者は俺と夜叉先輩と芦屋さんだけだし、形式上のものでしか無いのだろう。



「はい、書けました」

「それじゃあ、今日からよろしくね伏見くん」

「はい。こちらこそよろしくお願いします」

「そうだわ、折角だしお祝いをしましょうか」

「お祝いですか?」

「ええ。新人歓迎会よ」



 先輩はいつもの意地悪そうな顔をしていないし、純粋な好意から俺を誘ってくれているようだ。

 それならば特に断る理由もないか。

 どうせ今日の夕飯は決まってなかったし、祝ってくれるというのなら素直に祝われておこう。



「それじゃあ、お願いして良いですか?」

「ええ。聞いたわね芦屋。今日の夕飯は飛び切り豪華にしてちょうだい。シャンパンタワーまでなら許可するわ」

「どこのホストですか。そこまで金をかけられても萎縮するんでそこそこでお願いします」

「それでは回転寿司などどうでしょうか?」

「回転寿司に行くって事ですか?」

「いえ、回転寿司を呼ぶっす。よろしいですかお嬢様?」

「そうね。たまには芦屋の作るご飯以外も食べたいしそれで良いわ。伏見くんも良いかしら?」

「まぁ、はい。俺はゲストなんで特に文句は無いですけど、回転寿司を呼ぶってなんですか?」

「呼ぶは呼ぶよ。さて、夕飯にはまだ早いし映画でも観て時間を潰しましょう。来月公開の映画まであるから伏見くんの好きな映画に付き合ってあげるわ」

「回転寿司を呼んだり来月公開の映画を家で観れたり、夜叉先輩の家ってなんでもありなんすね」

「世の中の大抵の事は金で解決するのよ。さぁ、シアタールームはこっちよ」



 そうして俺は先輩に手を引かれ、宇宙で光る剣をブンブン振り回すヒットタイトルの新作を観て夕飯までの時間を潰した。

 映画を見ている途中で信じられないぐらい美味いポップコーンとコーラが出てきたりもしたが、夜叉先輩が暗闇の中襲って来る事もなくかなり楽しい時間を過ごす事が出来た。

 そしてメインの回転寿司だが……



「へい、らっしゃい!」

「マジで回転寿司じゃん」

「だからそう言ったでしょう?」

「お嬢様、こちら醤油でございます」

「ありがとう芦屋。ほら伏見くん。好きな物を注文して良いわよ。それがレーンに乗るわ」



 大手チェーン回転寿司店の寿司職人さんが目の前に立ち、横並びに座る俺たちの前を回転寿司屋のレーンが回っている。

 ここは夜叉先輩の家の中に間違いないのだが、壁にはオススメのネタのポスターが貼られ、のぼりまで立っている。



「先輩の財力ならこんな事も出来るんですね」

「何を勘違いしているのかは知らないけれど、これはお金さえ払えば誰でも受けられるサービスよ。ほら」



 先輩がそう言ってスマホを手渡してくる。

 そのスマホには今日夜叉先輩達が呼んだ寿司屋のページが表示されていた。

 そしてそのページのヘッダーには「出張回転寿司」と派手なフォントで書かれていた。



「マジかよ。高いは高いけど、頑張ればウチにも呼べそうな金額だ」

「あら、その時は是非招待してちょうだいね。大将、エンガワを炙りでお願いするわ」

「あいよ!」



 こうして俺のバイト先の新人歓迎会は始まり、腹一杯親しみのある大衆向けの寿司を食べてから先輩の家を後にした。

 俺の採用が決まってからの夜叉先輩は異様に上機嫌で優しかったが、あれは純粋に優秀な俺を採用できて喜んでいただけだと思いたい。

 だと良いなぁ。

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