第64話 カウントダウン~文化祭0~
『あー、あー、マイクテスト、マイクテスト』
月曜日、朝7:59分。静まり返った校内に、識の声が響き渡っていた。昨日の夜まで準備していた生徒たちは、校庭や自分の教室でうずうずしている。
『皆!、待ちに待った文化祭だー!』
校内中から歓声が上がり、校外まで届いていた。すでに校内のあちこちでクラッカーを発射され、校庭では炭酸飲料が一斉にシャッフルされ始めた。
『さあ、カウントダウン、スタート!』
識の嬉しそうな声とともに、全校生徒によるカウントダウンが始まった。
10!
生徒たちは、飛び跳ねながら教室の時計を見つめて叫んでいる。
9!
『8!、さあ、先生方も一緒に!』
放送室でマイクに向かって叫んでいる識は、後ろを見ながらニンマリと笑った。
「お前な・・・・・」
「まあいいじゃないですか。昨日の夜からカウントダウン楽しみにしてたんですから」
「そうそう! ほらー、しほりんもカウント!」
識の後ろに立っていた志保と小次郎は苦笑いを浮かべながら、識のはしゃぎっぷりを眺めていた。
相変わらずスーツをビシッと着こんで腕を組んでいる志保は、識に引っ張られて無理やりマイク前に座らされた。
「お、おい!」
7!
『6!、皆~、あの志保先生もカウントするよ~』
『なっ!、お前、』
「「「「「「「「おおおおおおお!!」」」」」」」」」
「あ、あの志保先生が・・・・」
「クールを絵にかいたような人が・・・・」
「おい、誰か録音しろ!」
「それいいな!」
教室のどよめきが、放送室まで届いてきた。その声を聞き、志保は観念したような顔でため息をついた。
『5! さあ、しほりん!』
『その呼び方をマイクに入れるな!』
『4! さあさあ!』
『・・・おい、狩谷。お前も一緒にやってくれ。恥ずかしい』
「え、僕もですか⁉」
『それいいね!、さあ、狩谷先生もカウントするぞ~!』
マイク前でしゃべるものだから、識と志保の会話は全部生徒に筒抜け状態だ。またも、教室のどよめきが放送室を揺らす。
『3! ほらほら小次郎君も!』
『それじゃあ、やりますか。しほりん?』
識と一緒になってニンマリ笑った小次郎が志保をちらっと見ながら禁句を口にすると、志保の表情が固まっていた。
『・・・・あとで覚えてろよ、小次郎』
『2!・・・・・・1!・・・・・ほら、せーの!』
覚悟を決めた2人と、声が枯れ始めた1人は、思いっきり息を吸い込んでマイクに顔を近づけた。
『『『
こうして、毎年のように近所から騒音苦情が殺到するカウントダウンが終わり、文化祭が始まった。
※次回更新 8月6日 金曜日 0:00
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