第65話 文化祭1


 「メイドカフェどうですかー!」


 「お化け屋敷もありますよ!」


 「カジノどうっすか~」


 カウントダウンが終わったとたんに一般人がなだれ込み、生徒たちが声を張り上げ始めた。


 人と装飾で埋め尽くされた廊下を、腕章をつけた志保と小次郎はキョロキョロしながら歩いていた。


 「こう、人が多いと、移動も大変ですね、」


 「毎年、初日と最終日はこんな、感じだ、けどな、」


 なんとか廊下を通り抜けると、いきなり人がいないところに出た。


 「あれ、ここは空いてますね」


 小次郎が不思議そうに言うと、志保は無言ですぐそばの質素な看板を指さした。


 『生徒会ブース:学園の歩み』


 「・・・・・あ~~」


 「人混みが嫌いな私にとってはオアシスだよ、ここは」


 「にしても、僕たちは何すればいいんですか?」


 「そうだな、」


 志保は教室の壁に寄りかかりながら、ため息交じりに口を開いた。


 「ほとんど生徒たちに問題はないんだが、一般人の中に時々変な輩が交じってる時があるんだ。それの監視と注意だな」


 「・・・・ってことは、あの人混みにまた入るってことですか」


 「・・・・・識はどうしたんだ?」


 「闘技場に居ますよ。なんでも、ステージ発表の司会者だとか」


 「それよりはマシか。行くとしよう」


 「はい」


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 「すごい人だね」


 「かわいい子が一杯いるわね~」


 「・・・・俺はもう帰る」


 「そう言うなって」


 大男が、すでに帰りたそうな根暗の肩を抱きながら朗らかに言った。


 「おい。少しは周りに溶け込め」


 隊長が、イラついたような声で他の4人をにらんだ。何しろ、少年は相変わらずパソコンを抱きかかえているし、女はいつも通りの風俗嬢のような服装。根暗はボロボロのTシャツを着こみ、大男にいたってはなぜかチャイナ服だ。


 そのすぐ横で、休日の父親のような服装をしている隊長は、頭痛が収まらなかった。


 (なぜ、こうなるんだ・・・・・・。戦闘はできるのに)


 「あと、なんで木箱のまま持ってきたんだ! 少しはカモフラージュしろ!」


 「わーったよ。うるさいな」


 「そんな細かいこと言ってると、禿げるわよ」


 「・・・・・俺は帰る」


 「僕もあんま興味ない。てか、なんで全員で来たの?」


 いったん学園から遠ざかりながら、隊長は唸るように説明を始めた。


 「戦闘になるとしたら、校内だ。地理を把握しておいて損はない。それにどこに仕掛けたかわからないと、困るだろう?」


 隊長は、大男が抱えている木箱を叩きながら言った。


 ※次回更新 8月14日 金曜日 0:00

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