第62話 準備


 「・・・・・なあ、今何時だ?」


 「・・・・午後9時ですね」


 昼間並みに明るくライトアップされている校舎の階段に座りながら、小次郎と志保はため息交じりに話しこんでいる。


 「今日は、授業なかったよな」


 「はい」


 「なのに、なんでこんな時間まで準備しているんだ!」


 志保の膝で幸せそうに眠っている識の頭をパタパタ叩きながら、志保が叫ぶように言った。


 「終わってるクラスもありますよ」


 「1クラスでも残っていれば、私たちも残らざるをえないじゃないか!」

 

 「・・・・皆元気ですねえ」


 「君と同年代だぞ」


 「それもそうでしたね」


 一日中続いた校内の見張りに疲れ切ってしまった小次郎の顔には、諦めの2文字がありありと描かれていた。


 「どうせなら、クラスの準備覗いちゃいますか?」


 「・・・・それいいな」


 「でしょう?。識先生が起きてたら猛反対したでしょうけど」


 「よし、行こう!」


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 すでに深夜テンションになっている2人は、階段に識を放置してクラスの準備を見始めた。


 「お化け屋敷、カフェ、お化け屋敷、お化け屋敷、カフェ・・・・・なんか全部似てますね」


 「まあ、教室でできることなんて限られてるしな。しかし、異能も使うから結構派手になることも多いぞ」


 「へえ~、」


 2人は見張りの名目で、すでに文化祭を楽しんでいるようなものだった。


 「そういえば、香耶のクラスは見るか?」


 「当日まで見るなって釘差されてるんですよね・・・・・」


 「・・・・やめておこうか」


 「はい」


 -------------------------


 その頃、5人は根城を出て、車に乗り込んでいた。


 「・・・・協力者が要る」


 「学園内に入らなきゃいけないしね」


 「それにこの木箱も使わせてもらいたいしな」


 「え?、そのまま客として入ればいいじゃない」


 05が、棒付きのキャンディーを舐めまわしながら言った。


 「バカか、デカ乳。特にあんたの武器なんて堂々と持ち込めるか」


 「あ~、それもそっか」


 女の能天気さは、いつでも変わらない。周りの4人もそれに関してはあきらめているようだ。


 「・・・・誰でもいいから、生徒を捕まえよう」


 「そうだな。捕まえた後はよろしく頼むぞ。02」


 根暗な男が、喉に何か詰まったかのような歪な笑い声を上げながら、うなずいた。


 「来週の何日に襲撃するか、決めてるの?」


 少年が、パソコンを叩きながら言った。


 「ああ。最終日だ」


 ※次回更新 7月28日 火曜日 0:00

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