第60話 とある5人


 「・・・・全員そろったな」


 「ああ」


 「うん」


 「早く始めろ」


 「はいは~い」


 都会の、あるガールズバーの個室で成人男性が3人、少年が1人、水着みたいな恰好をしている女性が1人、顔を突き合わせている。


 「克己の話は、知ってるな?」


 「あのバカでしょ」


 「もう、03はツンデレさんだなあ~~~、もう!」


 「引っ付くな、デカ乳女」


 「あ、ひっど~い!」


 集団の中で唯一ふざけている女性は、場の緊迫感をぶち壊していた。少年の頭を撫でまわしながら、ケラケラと笑う彼女にひげ面の大男が下卑た視線を向けた。


 「なんだ、お前。ショタ好きだったのか?」


 「ん~~、ていうか、あんたのことは嫌~い」


 「っ、なんだとてめえ」


 「なによ、このゴリラ!」


 腕を振り上げた大男を片手で押さえつけた青い瞳の青年が、凍てつくような声で2人に釘を刺した。


 「やめろ、04。それに、05も挑発するな。それよりも本題だ」


 今まで弛緩していた雰囲気が、一気に引き締まる。


 「どうするんだよ、01。雇用主がいなくなっちまったんだ」


 「手としては、2つある。中東に戻るか、日本で他のバックを探すか」


 「中東は、嫌いだな」


 「僕も嫌いかな。空気がいがらっぽい」


 大男と少年の意見は一致している。


 「あたしも嫌いかな~、いい男も隊長くらいしかいないし」


 「・・・・俺はどっちでもいい」


 女はIQ低めの回答を堂々とし、今まで黙っていた前髪で顔がまったく見えない細身の男は、興味なさげに答えた。


 「なら、日本に残る方向でいいんだな?」


 隊長と呼ばれた青年の言葉に、残る4人はうなづいた。


 「が、それにあたって、しなくてはならないことがある」


 「異能学園か」


 「そうだ。あそこに我々は面子を潰されたままだ。信用がものを言うこの業界じゃ、それはまずい」


 「・・・・・確か、近々文化祭がある」


 「・・・・・ほんとだ。来週いっぱいだね」


 根暗な男の言葉に、機敏に反応した少年が素早くパソコンを叩いた。その画面を楽しそうにのぞきこんだ女は、舌なめずりをした。


 「ふふふ、かわゆい異能者が一杯いそう!」


 「来週か。少しキツいが、まあ装備もある」


 「やるのか?」


 大男が、貧乏ゆすりをしながら身を乗り出した。


 「当たり前だ。首謀者は検討がついているんだろう? 03」


 「もちろんだよ、隊長。といっても証拠があるわけじゃないけどね」


 少年はパソコンを操作し、ある資料を出すと全員に見せた。


 「狩谷小次郎。最近入国してきた新任教師だ。が、飛行機会社のチケット履歴に彼の名前はない」


 「・・・・・・軍か」


 「ま、だろうね」


 ※次回更新 7月21日 火曜日 0:00

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