第57話 同棲⁉


 「おい、さすがにもう起きろ」


 「ん~~~、あと30分・・・・・」


 「そこはあと5分とかだろ」


 日本人にしては高身長な少年が、呆れたようにベッドのふくらみに話しかけた。


 「今日、土曜日でしょ・・・・」


 「お前も俺も今日は学校あるだろ。明後日からの文化祭、忘れたの?」


 「あ!、そうだった!」


 飛び起きた黒髪の少女にタオルを投げた少年は、寝室の扉に手をかけた。


 「まずは顔洗ってこい。朝食は作っといたから」


 「軍隊式の?」


 「・・・・・・見た目だけで言えば、少しは良くなってると思う」


 「そう~?。ま、あとで確認してあげる」


 「どうも・・・・・」


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 克己首相が国際裁判所に連行された後、日本の警察は一連の事件の犯人探索すら始められていなかった。


 何しろ、彼らの行動は犯罪者たる克己の逮捕に協力することになっただけでなく、殺人等はまったく起こしていないのだ。


 ところどころ、法に触れてはいるが、大国からの礼状の前にはそんなもの些細なことだった。


 3人は学園に戻り、識と小次郎は職場復帰し、香耶は未だに生徒として学園に通っている。


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 (なんだかんだ、この同棲生活も3か月か・・・・)


 朝日が差し込むリビングでコーヒーを入れながら、小次郎は学園に戻ってきた当時の、校長のニヤケ面を思い出していた。


 「小次郎くんはすぐにどっか行っちゃいそうだから、望月さん。監視してくれるかな?」


 「「え」」


 「大丈夫!、家は貸してあげるから。そこに2人で住みなよ」


 (あいつ、絶対にからかってたよな。あの時)


 コーヒーを食卓に置くと、着替えた香耶が姿を現した。


 「改めまして、おはよ!」


 「ああ、おはよう」


 2人は席につき、ゆっくりと食事を口に運び出した。


 「ふ~ん、卵焼きよくなったね。最初はスクランブルエッグと大差なかったのに」


 「そりゃ、毎朝作ってりゃうまくなるさ」


 味付けに関してはまだまだ適当な小次郎の食事を評価していた香耶が、いきなり口調を変えた。


 「・・・・・ねえ、さ」


 「ん?」


 「もう、この生活も3か月くらいだね」


 「ぷっ、」


 「む、何よ」


 「いや、さっき俺もそのこと考えてた」


 「ホント?」


 「ホントホント。それで、それがどうかしたの?」


 「・・・・いつまで続くのかなあって」


 「・・・・・それは、前にも言っただろう。あと2か月くらいだ。それで俺は前線に行かなくちゃいけない」


 「・・・・・だよね」


 「・・・・・・・ああ」


 ※次回更新 7月10日 金曜日 0:00

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