第51話 復讐2~香耶&識サイド~
「もうそろそろかな~っと」
小次郎がタクシーに乗り込んだ頃、識は茂みの中でイヤホンを耳に押し込んでいた。流している音楽は意外にもクラシック、それも「ワルキューレの騎行」だった。
すでに構えているライフルの照準を確認し、時計を見ながら携帯のマイクに話しかけた。
「香耶~、もういいよ~」
『わ、わかりました!』
無線越しにも、香耶が緊張しているのが識に伝わってくる。銃把を握る腕が震えている自分を棚に上げて、識は彼女の心配をしていた。
(大丈夫かな~。ちょっととはいえ演技も要るし、心配だな・・・・)
再び時計に目をやると、9:30。ターゲットは空港から滑走路に向かう階段を下っているところだろう。
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「わ、わかりました!」
なるべく小さな声で応答した香耶は、ポケットに手を突っ込みながら立ち上がった。周りには外国から渡ってきたであろう、国際色豊かな旅行客がわんさかといる。
その中から、小次郎に言われたとおり私服警備官を視界にとらえる。もともとベンチに座っていた時から目をつけていた人だ。
その警備員はしきりに時計を確認しており、貧乏ゆすりを繰り返している。そんな彼との距離が約50mほどになるところまで、香耶はゆっくりと歩いた。
窓の外に顔を向けながら、そっとポケットから手を引き抜いた。その手の中には、真っ黒な38口径のリボルバーが握られている。その小型拳銃は、香耶の小さな手にもすっぽりと隠れていた。
バン!、バン!、バン!、バン!
銃口を下に向けて立て続けに引き金を引く。銃声を知っている外国人たちは悲鳴を上げつつも、外に走り出した。
「
そんなパニックの中、香耶の英語が響き渡った。彼女が指さした先には、銃声に反応してしまい、思わず懐の銃に手を伸ばしてしまった警備員の姿があった。
彼の周りにいた屈強そうな外国人たちが、スーツケースを投げ出して彼に飛び掛かっていった。それを横目で眺めた香耶は、パニック状態の旅行客とともに外に走っていった。
「お、押さないでください! 身体検査を受けてから、っ!」
外にいた警備員が必死になって旅行客を止めようとしている。そんな彼に、香耶は素早く近づいていった。
異能を発動させた香耶の手のひらが警備員の死角から口元に伸びていき、限りなく真空に近い空間が、彼の肺と脳を直撃した。
倒れ込む警備員に目もくれず、香耶は再び走り出した。
※次回更新 6月19日 金曜日 0:00
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