第50話 復讐1~小次郎サイド~
空港を出た小次郎は、ある場所を目指して歩き始めた。歩きながら、頭の中に入っている予定表と地図を確認する。
(たしか、そろそろ・・・・・)
腕時計に目をやると、ちょうど午前9:00。空は今にも雨が降りそうな曇天だ。歩き続けて、地図上で目をつけていた角で止まり、少しだけ顔を出した。すると、空港の裏手に一台のタクシーが停まるのが見えた。
停車すると同時に私服姿の警護班がわらわらと中から出てきて、周りをかためた。それに続くように
(顔が青ざめてるぜ、お父さん?)
かなり離れたところからカーブミラー越しにその様子をのぞいていた小次郎は、ほくそえんだ。
ターゲットとその周りを囲んでいる男たちは足早に空港内へと入っていった。その場にはタクシーがポツンと取り残されている。
(ま、あの運転手も政府の奴だろうな。緊急事態に備えて待機しているんだろうが・・・・)
そのタクシーに小次郎は近づき、窓を軽くたたいた。
「な、なんでしょうか」
(パッと見、無線等はオフになってるか・・・)
小次郎が車内にざっと目を通して、外部とのつながりがないことを確認する。そんな中でも目につくほど運転手が着ている新品同然の制服がテカテカとしていて、彼の不慣れ具合を露呈していた。そんな彼に小次郎は笑みを浮かべて、腰を低くした。
「実は、道に迷ってしまって。乗せてもらえませんか?」
「す、すみません。このタクシーは予約済みで・・・・」
「でもそこに空車ってかいてありますけど」
「え?、あ、そ、そうですね。すみません。今、直します」
「いえいえ。こちらこそすみません」
その運転手は慣れない手つきでフロントガラス付近の空車表記を変えようと、小次郎から目を離した。
ネズミを見つけたネコのような素早い動きで伸びた小次郎の手が、異能による電流を帯び、運転手の首を直撃した。
「んがっ!」
「はい、おやすみ」
彼がクラクションに頭をぶつける前に頭を引っ張り、外に引きずり出した。彼から制服をはぎ取り、トランクに放り込んだ。手早くそれらを身に着け、運転手に変装する。
最高責任者がひそかに車を停めさせる場所だ。人目につく心配はなかった。
次に小次郎は電流を帯びた右手をゆっくりと自分の喉に当て、声帯の構造をいじくり始めた。
「・・・・・あ、あ、あああ。ま、こんな感じの声だったかな」
運転手の声帯模写を終えた小次郎は時計に目をやり、計画の時間を待ち始めた。
※次回更新 6月16日 火曜日 0:00
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