第49話 復讐0


 「で、どうするの?」


 小次郎の部屋に行き、香耶と識はベッドに腰かけていた。小次郎は床だ。


 「・・・・・こっちから仕掛ける。残念だけど、素直に謝ってくれそうにないからな。問題は拉致にするか、殺すか。その二択だ」


 小次郎は静かな目を香耶に向けた。


 「・・・・・・・」


 「お前には厳しい選択かもしれない。だから、俺にその選択を任せてくれるというのなら、俺はない頭をしぼるよ」


 しばらく考え込んでいた香耶は、結審したのか、顔を上げて言い切った。


 「・・・・あの人にはきちんと生きたままでママに謝ってほしい」


 「わかった。そうしよう」


 小次郎はすぐさま一枚の地図を取り出した。


 「あの男はちょうど6日後、政務でアメリカに飛ぶ。が、だからといって、空港を閉鎖したりはしないだろう。そこを狙う」


 「具体的な案はあるの?」


 今まで黙っていた識が口を開いた。小次郎は自信ありげにうなずく。


 「まあ、ね。ただ、少し用意してほしいものがある」


 「・・・・・なに?」


 「そんなに警戒するなよ。一丁でいいから、38口径のリボルバーとその弾が欲しい」


 「わかってると思うけど、空港に配備される警備はそれで倒せるほど弱くないと思うよ?」


 識が当然の指摘を口にした。


 「別に倒そうってわけじゃない。ていうか、銃声が鳴りさえすればなんでもいい」


 「それでどうするの?」


 「いいか。その拳銃を使ってだな・・・・・・・」


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 「ね、ねえ。ホントにこの格好でいいの?」


 「ああ、上等」


 当日、小次郎と香耶は空港に来ていた。香耶はごく普通の旅行者といった装いで、ダボダボのズボンをはいている。


 対して、小次郎はきっちりとした服装に身を包んでいる。少しだけくたびれたYシャツに、タクシードライバーが穿いていそうなズボンだ。


 2人ともバックを背負ってはいるが、中身は少ない。スカスカのバックの中で、中古のガラケーが突如震えだした。


 「もしもし」


 『準備完了だよ~。でもこれ、終わっちゃうと暇だね』


 識の能天気な声が電話越しに聞こえてくる。その声に思わず頬を緩めた小次郎も、なるべく明るい口調で返した。


 「こっちももうすぐで着くよ。だから、もう少し待っててくれ」


 電話を切り、2人はごく自然に離れていった。某空港内で、香耶はターミナル付近のベンチ付近で本を開き、小次郎はまっすぐ出口に向かっていく。


 外に出ると、私服姿の警備が目に入る。彼らは変装しているつもりだろうが、片耳のイヤホンと、時折口元を隠す動作でバレバレだ。


 (さて、状況開始)


 ※次回更新 6月12日 金曜日 0:00 「復讐1」

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