第24話 疑問
「なっ!」
「銃を持って飛び掛かってきた相手を撃って、何がまずいんだ?」
「そ、それは・・・」
「それに、あんたの学園で起きたこんなことを公表するのかどうか、あやしいしな」
「・・・・・」
黙ってしまった学園長に背を向けて小次郎は歩き出した。
「とはいえ人ひとり殺したわけですから。部屋で謹慎でもしてますよ」
その言葉にこたえられる人はその場に誰もいなかった。
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あれから1週間がたち、事態は収拾した。事件はなかったことにされ、優勝者は学年1位の女子になった。ちなみに名前は
「名前知れたけど、別に意味なかったな」
寮の一室で小次郎はネット上の学園サイトを見てつぶやいた。
(さすがに大野のことは出てないよなあ。内密にしてるし)
コンコン
ふいに小次郎の部屋の扉がノックされた。
「はい」
小次郎は扉のかんぬき近くに背中をつけながら答えた。もちろん、太もものホルスターにはキャリコが装着されている。
ガチャ、
「あれ?」
「なんだ、識先生ですか」
入ってきた識は扉の影に隠れていた小次郎に気づかずに少し動揺したようだった。
「わっ! そ、そんなところにいたの?」
「すみません、驚かしましたね」
「う、ううん。大丈夫」
そう言いながら、識の目は小次郎の太ももに吸い寄せられていた。
「・・・気になります?」
「!、ご、ごめん・・」
「いえ、当然だと思いますよ」
そういって小次郎は識に椅子をすすめた。しかし、寮の部屋には1つしか椅子がないので小次郎はベットに腰かけた。
「それで、何の用ですか?」
「うん。大野先生のことなんだけどね。彼、身内がほとんどいなかったから学園で内々に葬式を済ませたよ」
「そうですか」
小次郎の表情は揺るがない。
「彼、奥さんはいなかったんですか? それなりの年だったでしょう?」
「彼、奥さんに逃げられてるんだよね・・・」
(・・・殺しておいてなんだけど、悲しい人だな)
「それで、僕の処分はどうなりましたか?」
「もう2週間の謹慎のあとに、現場復帰だって。学園長先生が言ってた」
「わかりましたと伝えてください」
「うん、それでね」
識は椅子の上で、居心地悪そうにしている。
「なんですか?」
「小次郎君にとって命ってなんなの?」
「はい?」
「だって!、あんな簡単に、迷いもなく、引き金を引いて!、その後もなんにも感じてないみたいで、それで!、」
「自分を守るために人を殺すことを間違いだとは思いませんし、それを今更罪悪に感じたりしませんよ。・・・僕にとってはあなたがたのほうが異常に見えますけどね」
「へ?」
※次回更新 3月17日 火曜日 0:00 「異常」
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