第23話 始末
小次郎が大野のそばにつくと、大野は銃を構えていた。
(いくらなんでも血迷いすぎだ。こんなことをしても意味はないのに・・)
銃を構えた大野の目は真っ赤に充血していて、口からはよだれがこぼれかけている。
「おっと、」
引き金を今にも引きそうだったので、ひとまず指でおさえる。
(やっぱ、自爆してもらうのが一番かなあ)
小次郎はキャリコから弾を1つ取り出して、大野が構えている銃の銃口にはめ込む。その後、急いで対戦している2人の真横に戻り、キャリコの照準を合わせる。
「減速」
ゆっくりと動いていた時間がもとに戻る。
バガン!!
破裂音とともに大野がいた位置で爆発が起き、会場の全員が動きを止める。対戦中の2人はいきなり現れた小次郎に驚き、その場から飛びのいた。
「グアアアアア⁉」
遠目にも大野が手を押さえながら悶えているのがわかる。
「何事だ!」
学園長が叫ぶ。その言葉で観覧席にいた警備員が観客を避難させ始めた。もちろん問答無用でだ。
「こ、小次郎くん?」
識が心配そうに近づいてくる。小次郎は照準を合わせたまま返事をした。
「なんですか?」
「だ、大丈夫なの?」
「はい。あの銃は暴発させましたから」
ふと目をやると選手は志保が避難させていた。
「ぼ、暴発? ちょっと小次郎君が観覧席に飛んでから戻ってくるのが見えたけど、一瞬でそれをやったの?」
(見えたのか。さすが狙撃手だな)
「ま、銃口に詰め物をしただけですけどね」
バン!
突如、警備員に囲まれた大野が観覧席から飛び出した。おおかた能力で黙らせたのだろう。
小次郎は太った体で器用に飛び上がった大野に照準を修正し、容赦なく引き金を引く。
バババババババババババ!!!!
全自動の発射音が響き、まだ観覧席にいた観客が肩を震わせ走り出した。血が飛び散り、大野が、大野という人間だった物体が失速し落下した。
「ひっ!」
そばで識が悲鳴を上げたが、小次郎は気にせず落下した物体に近づいた。
「・・・・・」
動かなくなっているのを確認し、銃を向けたまま首に指をあてる。
「死んだな」
小次郎は立ち上がり、キャリコをホルスターに戻す。その行動を、降りてきた学園長やその取り巻き、識が蒼白な表情で見つめていた。
「・・・やってくれたね」
学園長が口を開いた。それに小次郎は無表情で答える。
「異能を使うと警報が鳴る、なんてものをつけさすからこうなるんだ」
「そういう問題ではないだろう。君は殺人を犯したんだぞ」
小次郎は心底うんざりしながら、肩をすくめた。
「強がるなよ。弱く見えるぞ」
※次回更新 3月13日 金曜日 0:00 【思わぬ効果】
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