第22話 武闘祭«午後の部» 後編
武闘祭ー決勝----------------------------
(ようやく最終試合か。・・長かったな)
内心うんざりしながらも、小次郎は周りへの警戒を緩めなかった。
(大野の姿が見えないのが一番気になる。いったいどこにいるんだ?)
「では両者、構えて」
志保が選手に呼びかける。片方は学年1位、もう片方は見たことのない男だった。いかにも優男な雰囲気をまとっている。
(なんで決勝にA組のやつがいるんだよ・・・・・)
これが警戒を緩められない理由であった。
「始め!!」
男子生徒は始めの合図とともに距離を取り、弓型のデバイスを展開する。学園1位の彼女もデバイスを展開する。
「女の子を傷つける趣味はないんだけどなあ、僕」
ウィンクでもしそうな口調で、男子生徒は弓を引き絞る。
「レイン・フォール!」
弦を放すと、無数の矢が飛び出した。彼女は炎を出し、それをはじく。
「こんなので私と戦うつもり?」
「まさか。これはほんの小手調べだよ、マドモアゼル」
「その話し方やめて。きもい」
(おおう、きっついなあ。確かに気持ち悪いけどさ)
ボオオオオオオオ!
「く、くそ⁉」
彼女の剣が炎を吹き、竜巻となって男子生徒に襲い掛かる。男子生徒は必死に弓を前に突き出して、矢を放つ。
「ウィンドウォ―ル!」
矢が竜巻に当たると広がり、壁のようになった。
(空気を操る能力かな? でも、それならもっといい使い方があるのに・・)
今までの試合でも使い方次第でもっと強くなれる生徒が大勢いて、小次郎は歯がゆい思いをしてばかりだった。
「そんな紙みたいなので、どうするの?」
彼女は口元をゆがめて、剣を振りかぶる。
「フェニックス」
その瞬間、剣から炎が鳥の形をして放たれた。それは壁を簡単に破壊して男子生徒に迫った。
『小次郎くん!』
「わかってる!」
男子生徒を心配してではない。会場の奥に大野が見えたのだ。目が尋常じゃないほどに血走っている。
「加速」
小次郎は異能で反射速度を常人の10倍にしている。しかしそれでは日常生活に支障をきたすし、なにより体がもたない。
そこで、意識を切り替えることで小次郎は反射速度を上げ下げしているのだ。
小次郎の周りの時間が、ゆっくりと流れている。炎の鳥も、膝から崩れ落ちかけている男子生徒も、上を見上げて驚いている志保と識も、すべてがゆっくりと動いている。
「さて、」
小次郎はゆっくりと流れる時の中で地面を蹴り、会場まで飛ぶ。仮想空間の壁を越え、会場の最前席に足をかけて大野に肉薄する。
「何してるんだ、くそ老害!」
※次回更新 3月10日 火曜日 0:00
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