第25話 異常


 「あなたがたは普段何をしてるんですか?」

 

 「えっと、狙撃の訓練とか、異能戦闘訓練?」


 「それらは何のためにやってるんですか?」


 「国を守るため?」


 (まじかよ・・・・)

 

 「てことは人を殺すため、でしょう?」


 「!」


 識が息を呑んだのを見て、小次郎は話を続ける。


 「俺が不思議に思ってるのはなぜ人殺しの訓練校で人を殺すことを責められなきゃいけないのかってことです」


 「そ、それは・・」


 「まあ、別にいいですけどね。俺の価値観は日本人のそれとは違いますから」


 ------------------------------深夜


 小次郎は謹慎中の2週間、軍の伝手を使って学園のことを調べ上げた。


 (今のところここを標的にしている組織はなし、か。狙っても意味ないが、時々馬鹿なやつがいるからな)


 今後、騒動が起きた時に殺人を一々責められていては、まったく動けない。それを防ぐための布石であった。


 ちなみに小次郎は今回のことで隠し持っていたキャリコと弾薬を没収されている。流石にライフルは死守したが。また、警報装置をつけられているので異能はおろか、デバイスの展開もできない。


 (でも、武器はまだあるんだよね)


 小次郎はまず右手の小指の第二関節を曲げる。すると、軽い金属音がなる。そして、すべての指の第二関節を曲げると、手の甲から6㎝ほどの刃が3本飛び出した。


 (自己改造に感謝だな)

 

 これも前線ではあまり使うことはなかったが、武器を取り上げられたりすると、有効になってくる。


 刃は圧縮したカルシウム合金でできており、金属探知機に引っかからない。その上、小指のスイッチを入れないと刃が出てこないようにしてある。これが両手にあるのだ。


 「ん?」


 小次郎は部屋の外からゆっくりと近づいてくる気配に気が付いた。小次郎は一瞬、扉に向かいかけたが、コートを丸めて掛け布団に突っ込み、電気を消し、自分は扉のかんぬき側に隠れた。


 カチャ、カチャ


 扉の鍵がいじくりまわされている。すると、ほどなくして扉が開いた。


 (セキュリティひどすぎるだろ。別の鍵つけようかな)


 開いた扉から人影が、ゆっくりと入ってきた。フードを目深に被り、ナイフを持ったその動きはカクついていて、お世辞にも慣れているとは言い難い。


 「フーッ、フーッ、フーッ」


 鼻息を荒くした人影はナイフを振りかぶって、膨らんでいる掛け布団に突き立てた。その瞬間、小次郎はライトをつけて、扉を閉じた。


 バタン!


 「なっ⁉」


 「終了ジ・エンド。はい、そのフード取ってね?」


 「く、くそっ!」


 ※次回更新 3月20日 金曜日 0:00

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