第19話 成敗!①


 ひとしきり笑った後、小次郎は識たちと昼食を取った。


 「気を付けてね、小次郎君」


 昼食後、闘技場から出ていこうとする小次郎に識が声をかけた。志保も心配そうにしてくれている。


 「はい。波風立てないようにはするつもりですから大丈夫ですよ」


 小次郎はそう軽く言うと闘技場を出た。闘技場のドアを閉めた瞬間に、小次郎の左手は無意識に太もものホルスターに伸びていた。


 (異能は使えない。なら、体術と頼みだな)


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 「来たか、」


 「はい。お待たせしましたか?」


 小次郎が闘技場裏に着くと、大野がたばこを吸っていた。


 「この大会は教師にとって今後にかかわる大事な大会だ。軽く考えてもらっては困る」


 (いきなりか、)


 「はい、すみません」


 (できれば釘を刺すぐらいで開放してほしいものだが)


 「私はね、午後からの3回戦、準決勝、決勝。すべてでとは言わない。2-Aの生徒に勝たせてやりたいのだ」


 「・・・それで私にどうしろと?」


 「ふ~ん、君はもう少し聡明だと思ったがね」


 「何しろ世間知らずのですから。具体的に指示があれば、おっしゃっていただかないと」


 「そうじゃないんだよなあ。今の話でわかるだろう?」


 「具体的にお願いします、と私は言いましたよ」


 「・・・2-A の生徒が勝てるように誘導しろ」


 「なるほど。そういうことでしたか」


 「わかったか。ならよろしく頼んだぞ」


 そういうと、大野は立ち去ろうとする。


 「私は引き受けるとは一言も言っていませんよ?」


 「なに? 私の指示が聞けないとでもいうのか?」


 大野の機嫌が目に見えて悪くなる。


 「なぜ、あなたの指示を聞かなければならないんですか?」


 「なんだと‼ 私は生徒指導部長だぞ! 私に刃向かえば、いかに教師と言えどもただではすまんぞ!」


 大野は小次郎の顔を覗き込むように、近づいてきてそう言った。


 (こいつ、ヤニ臭いな。そのうえ清涼菓子でも食ってるのか? その匂いも交じってやがる)


 「先ほど言いましたが、世間知らず故、私はあなたがどんなにえらいのかよくわかりません。それに私は社会的地位の高低で人を判断しません」


 「は?」


 (腐ったミントみたいな匂いがする・・。頼むから口閉じてくれよ)


 「あなたみたいな弱い人に指示されるいわれはないですね」


 ここで大野がぶちぎれた。


 「わ、わ、私を誰だと思ってる!!! 生徒指導ぶ」


 「それがなんです? あなたは生徒にとっては教師かもしれませんが、私にとっては赤の他人です」


 「・・・・いいだろう。この学園に居られないようにしてやる」


 「ぷっ、フフフフフフフフ」


 「何がおかしい!!」


 「あはははは、お、がそんなものに固執するような人間に見えるのか?」


 「!」


 「それに学園に居られないようにするって。おかしすぎるだろ」


 「な、なにがだ」


 しばらく声を殺して笑っていた小次郎は大野を上から見下ろしながら言い放った。


 「それはな、あんたがだからだよ」


 ※次回更新 2月28日 金曜日 0:00

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