第16話 開会式

 小次郎が教師として働き始めて、2か月がたった。その間には特に変わったこともなかった。強いて言えば、教師間の競争がおもったより激しいと理解したくらいだ。


 (生徒たちも相変わらず俺を目の敵にしてるからな)


 さすがにまずいかなと思って、学園長に相談はしてみたが・・・・。


 「まあ、しばらくは大丈夫だよ」


 「そ、そうですか?」


 「ああ。集団というのはね、ある程度の敵がいないと緩むし、結束力が弱くなったりするからね」


 (俺は、スケープゴートかよ・・・・)


 「それに今回は様子見だ。この大会での戦闘がひどい時には君にも動いてもらうよ」


 「わかりました」


 そして、2か月、ずるずると何もせずに来てしまった。


 そして2か月後の今日、武闘祭が開かれる-------------------------------


 「あの、やっぱまずくないですかね。僕が審判やるの」


 「何を言ってる、お前の参加は決定事項だ」


 小次郎は早朝から闘技場の教官室で、ルールブックに目を通していた。


 「それならいいんですけど、反感を買う気がしますよ」


 「反感を買ったところで、いやがらせでの攻撃などはフィールドの防護壁で防がれるし、お前の実力なら大丈夫だろう?」


 (手加減するのが苦手なのになぁ・・・)


 「はあ~~~~~~~~」


 小次郎の隣では、識がくてっと机に突っ伏している。


 「おい、このグータラ教師!」


 「ひどいなあ、しほりん。私は立派な教師ですよ~」


 「なら、その態度はなんだ」


 「これは私のやる気を示しているんだよ~」


 「やる気皆無じゃないか!」


 ピンポーン


 そんなやり取りをしていると、校内放送が入った。


 『これより、武闘祭の開会式を始めます。生徒及び教師は闘技場にお集まりください』


 (いよいよ、か)


 -------------------------------


 「眠い・・・・・・」


 開会式だから選手宣誓くらいで終わると思っていた小次郎だが、実際はルール説明で20分は使ってる。


 (意識が、睡魔にパックマンされる・・)


 「これで、開会式を終わります。選手は各自、準備に入ってください」


 (やっと、終わった・・・・・)


 「やっと終わった~」


 見れば、識も同じように感じていたようだ。志保でさえもげんなりした顔をしている。


 「さ、私たちも準備をしなくてはな」


 「服装はこのままでいいですよね」


 「ん? まあ、問題はないだろうが、いいのか?」


 「はい」


 小次郎にはどうしてもその格好でなくてはならない理由があった。


 ※次回更新 2月18日 0:00

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