第15話 戦闘と指導


 

 「うらあ!」


 百目鬼はいきなり突撃してきた。


 (悪くはない。しかし、感情的すぎる・・)


 初手の右ストレートを余裕でかわした小次郎は、距離を取り、ポケットに手を入れた。


 「・・なんの真似ですか」


 「一応教師らしいこともしなくちゃいけないからな。好きに攻撃してくれてかまわないぞ」


 「・・・・わかりました」


 遠目にも青筋が浮かんでいるのがわかる。


 「はあ!」


 百目鬼は距離を詰めると、上段蹴りを放ってきた。

 

 「はい、失格」


 「なっ?」


 小次郎は素早く腰を落として、百目鬼の軸足を軽く払う。当然百目鬼は後ろ側に倒れこむ。


 「実際の戦闘で上段蹴りなんて使っちゃいけないよ」


 小次郎は百目鬼の顔を覗き込むようにしながら、そう言った。


 「隙ができすぎるからね」


 「・・そうですか!」


 百目鬼はさらにイラついたような顔をして、飛び下がった。


 「まだ、やれるだろう?」


 「当たり前ですよ」


 (今回はさすがに突っ込んでは来ないか)

 

 それならばと、小次郎はポケットに手を入れたまま距離を詰める。


 「!、」


 「蹴りってのはこうやって打つんだよ」


 小次郎は腰を落とし、右と左を混ぜ合わせながら中段から下段を中心に狙っていく。


 「く、くそ」


 「あくまで一発は狙わず、軽い一撃を確実に急所に打ち込む。これがコツだよ」


 小次郎は連続で蹴りを繰り出しながらも、説明を続ける。百目鬼には防御に手いっぱいで聞こえているかわからないが。

 

 「そして、相手の体が硬直してきたところで、」


 小次郎は今までよりも一段と早い蹴りで百目鬼の顎を打ち上げた。


 「素早くとどめを入れる。この一撃も当たる時よりも当てたあと、引き付けることを意識することが重要だ」


 小次郎は倒れこんでいる百目鬼に近づく。


 「この一撃のためにはそれまでの攻撃をフルスピードでやってはいけない。相手の

異能次第では攻撃の意味がないときだってある。精度だけを重視するんだ」


 ふと、他の生徒たちに目を向けると、誰もが驚きの表情を浮かべている。


 (こうしてみると同年代だという気がしないな。間抜けすぎる)


 小次郎が内心で毒づいていると、志保が近づいてきた。


 「おい、少しやりすぎだぞ」


 「そうですか?」


 「だが、まあ、教師としてはいいんじゃないか。調子に乗った生徒を叩くのも大切な役目だ」


 識は、後ろのほうで百目鬼を担架に乗せている。数人の生徒がそれを闘技場の外に運び出した。


 「これで少しは、教師だと認識してもらえればいいんですが」


 「いや、どちらかというと教師というよりは敵みたいなくくりになってると思うぞ」


 「・・・やっぱりそう思いますか?」


 「ああ、」

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