第14話 初授業
それから数日後、とうとう小次郎は授業に出ることになった。
「では、新任の特別講師を紹介する。狩谷、先生だ」
「よろしく」
小次郎は一歩前に出て、簡潔に挨拶をした。そのことに志保も識も何も言わない。なぜなら、小次郎は生徒たちに思いっきり、睨まれていたからである。
(何かしたっけかな?)
一瞬首をかしげたが、すぐに思い当たる節があった。
(そういえば学年だか、学校だかの1位を殴ったな、俺)
生徒たちの小次郎を見る目は憎しみ半分、恐怖半分といったところか。
そんなことでおびえたり、怒ったりする生徒たちを小次郎はうんざりとした顔で見下ろしていた。
「ね、ねえ、小次郎君。君、顔怖いよ?」
「おっと、これは失礼」
識が耳元でそう言ってきたが、小次郎に直す気はない。
「え~、彼の実力が本物であることは
そう言って、志保は授業を始めた。早速、小次郎は生徒たちのデータに目を通し始める。もちろん、事前に読んできてはいるが、他にすることもない。
(やっぱり、データの上ではいい数値が出てるんだよなあ)
上位のもので言えば、軍の異能師にも引けは取らない。
小次郎はふと視線を上げ、組み手をしている生徒たちに目を向ける。
(・・・見られたものじゃないな)
何もかもが未熟であった。まったく実践を想定していないその組み手は、畳水練という言葉がぴったりだった。
「なあ、狩谷、先生」
ぼーっと生徒を眺めていた小次郎に、志保が話しかけてきた。
「呼びにくかったら、呼び捨てでも構えませんよ」
「生徒たちの手前、それはまずいだろう。それより、頼みがあるんだが」
「なんですか?」
「この中で誰かと、組み手をしてくれないか?」
「それは、僕じゃなく向こうに聞くべきことかと」
「いや、生徒たちからの要望だ。なぜか皆、やる気満々でな。特に男子が」
(ああ、1位の子、結構美人だった気がする。そのせいかな)
正直、小次郎は一々対戦相手の顔を覚えたりはしない。それが特に瞬殺した相手なら。
「それなら、僕に異存はありませんよ」
「そうか。よろしく頼む。くれぐれも大けがはさせないでくれよ」
「・・わかってますよ」
(また、難しいことを。手加減するのも大変なんですからね)
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「百目鬼 伸二です。よろしくお願いします」
「狩谷小次郎だ。よろしく」
百目鬼はあからさまに、嫌悪感を表に出している。今にも噛みついてきそうだ。
(ポーカーフェイスぐらい教えとけよ)
※次回更新 2月14日 金曜 「戦闘と指導」
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