第12話 審判


 「だが、あなたは異能も武器デバイスも使っていないだろう?」


 小次郎は志保を立たせながらそう言った。


 「当たり前だ。そんなことを簡単にしてしまっては、校内で事故が起こりかねん」


 (平和ボケが・・・)


 小次郎は内心舌打ちしながらも、穏やかな表情で話を続ける。


 「では、異能を使用する訓練はどのように?」


 「仮想空間の中で行うし、校長の許可がいる。武闘祭でもそうだ」


 「武闘祭、校内戦のようなものですか?」


 志保は服の埃を払いながら、答えた。


 「ああ、お前はまだ知らなかったか。武闘祭は年に2回、夏と冬に行われる校内戦だ」


 「なるほど」


 「担任もちは必死だよ~。自分の生徒の成績がそのままその人の評価につながるからね」


 いつの間にか識も近くにきていた。


 「ま、わたしたちは関係ないけどね」


 「そうでもないだろう、識。私たちは審判をやるんだから」


 「そうなんですか?」


 「そ、そうだった~」


 楽しそうに話していた識は頭を抱えてうずくまってしまった。


 「ああ。識は前回病欠だったから知らないがな」


 「・・・もしかして僕もやるんですか?」


 「いや、二人いれば問題な、」


 「ノ~!」


 ガシッ


 見れば復活した識が小次郎の服の袖をしっかり握っていた。


 「小次郎君もやってくれる、よね?」


 上目遣いで目を潤ませた識はまるで、


 (捨て犬か、あんたは)

 

 「お前は休みたいだけだろう」


 「うっ、だ、だって~」


 志保はお見通しだと言わんばかりに、首を振っている。そんな志保を識はねだるような顔で見つめている。


 「はあ、僕でよければお手伝いしますよ」


 「やった~!」


 「おい」


 「ただし、」


 小次郎は喜んでいる識に向き直り、口を開いた。


 「校長先生の許可が取れたら、です。僕は生徒とほぼ同い歳ですから」


 「そ、そんな~。あの人、許してくれるかな~」


 「ま、望みは薄いだろうな。生徒と変わらない歳の審判など、障害にしかならん」


 (もとからやるつもりもないしな)


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 「「は?」」


 「だから、いいんじゃない?」


 その後、三人は校長室にいた。識がどうしてもと言うからダメもとで来てみたのだが・・・。


 「え、で、でも僕は生徒と歳変わりませんよ?」


 「今回から試合形式を変えてね。審判がもう一人どうしてもいるんだ」


 (まじか・・・。トラブりそうだな)


 「やった~!」


 「ああそうだ、識先生。彼が増えたところであなたの仕事は減りませんよ」


 「へ?」


 「言ったでしょう。試合形式を変えた、と」


 「そ、そんな~!」


 ※次回更新 2月7日 金曜日 0:00

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