第4話 戦闘


 「どうせ、どこかでモニタリングでもしてるんだろう?」


 『ばれてたか』


 上のほうの壁がずれ、ガラス張りの観覧席が現れた。マイクの前で麻子が続ける。


 『君のいうとおり、そこで彼女と戦ってもらうよ』


 「それはいいが、二つ質問がある」


 『また? まあ、いいけど』


 「俺はどこまでやっていい?」


 『はあ?』


 「軽傷、重傷、再起不能、死亡。どれかしら選んでくれ」


 『あのね。彼女はうちの学園の第一位よ。思い上がりも甚だしい』


 「・・・それはこっちのセリフだがな」


 『なんか言った!?」


 「じゃあ、二つ目。俺は異能を使っていいのか?」


 『使わずに勝てるものなら、勝ってみなさい』


 それだけいうとマイクの切れる音がした。


 (これは、怒らせてしまったかな)


 「・・・・・さっきから聞いていれば、つけあがって!」


 ふと視線を戻すと、女子生徒が体を震わせながら、怒っていた。


 「とっとと始めましょう。完膚なきまでに


 彼女の不用意なその一言が小次郎の警戒心を高めていく。


 (といっても力試しで相手を殺すわけにもいかないんだよな。許可もらえなかったし)


  『では、はじめ!』


 そんなことを考えていると、麻子が試合を始めていた。女子生徒がデバイスを展開する。彼女のデバイスは細剣であった。


 「せめてデバイスを展開する間は待ってあげるわ。さっさと準備して」


 「いや、俺は異能を使う気ないから」


 小次郎は両手をだらりと下げた状態から、地面を這うように駆け出し、一瞬で女子生徒の眼前にせまる。


 「っ、なめないで!」


 女子生徒は急いでデバイスを振りかぶる。


 (攻撃するにしても予備動作がある。そこをつけば勝て)


 「カハッ!?」


 女子生徒が気付いた時、小次郎のこぶしはすでに振り抜かれていた。吐き気をもよおし、その場に崩れ落ちる。


 (何? なんで? 予備動作がまったく見えなかった。そんなことが・・・?)


 「じゃあ、君に聞こうかな?」


 小次郎は女子生徒の顔をのぞき込む。その顔はまるで生ごみでも見るかのような表情をしていた。


 「俺はどこまでやっていい?」


 並みの生徒ならここで気絶していただろう。だが彼女は第一位。危険を感じ、飛び退く。


 (か、体が動かない?)


 彼女は飛び退いたつもりだった。しかし、実際彼女の体は1ミリたりとも動いていなかった。


 「手加減したから、もう少しできるかと思ったけど期待外れかな」


 小次郎は感情のこもっていない声を発し、立ち上がりざまに彼女を蹴り飛ばす。彼女は一言も発せずに吹っ飛んだ。


 小次郎がふと顔を上に向けると、麻子が信じられないといった顔でこちらを見ている。


 「だから言っただろう?」


 次の瞬間、小次郎の体は観覧席に向かって飛んでいた。


 ※次回更新 1月10日 金曜日 0:00

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