第5話 学園長
飛び上がった小次郎の右腕が振り上げられ、ガラスに振り下ろされた。甲高い音が響き、ガラスが砕け散る。
小次郎はそのまま中に着地する。
「ちょ、ちょっとなに考えているの?」
麻子があわてて小次郎を制止したが、小次郎は麻子ではなくその奥に座っているある人物を見ていた。
「こういうやり方はあまり好みじゃない」
「それはこっちのセリフでもあるな」
その人物は言っていることとは裏腹に楽しそうに答えた。優雅に足を組み、タバコをくわえている。
「場所を移そうか。ここではあまりに落ち着かない」
「わかった」
そういうとその人物は麻子に目配せし、小次郎を連れて観覧席から出た。赤いカーペットが敷かれた廊下を進んでいくと、離れのような部屋に着いた。
「さ、入りたまえ」
そこはいわゆる茶室であった。掛け軸や鉄びん、茶碗などはそれなりに使い込まれてるのがわかる。
その人物と小次郎はその茶室で正座し、向かい合った。
「まずは自己紹介をしよう。私は
「狩谷小次郎だ。よろしく」
「ああ、よろしく。いきなりだが君のドッグタグを見せてもらっていいかな?」
小次郎はさっき女子生徒から回収した自分のドッグタグをはずし、渡した。
「事前調査で知っていたものの、本当に傭兵ランクはA/0なんだね。驚きだよ」
「知っていてあの女子を俺と戦わせたのか」
「私は、というか前線に出たことのある日本人などほとんどいなくてね、傭兵ランクというものの基準がよくわからないんだ」
「そうか。ならなおのこと俺がここにいる意味はないと思うんだが」
「なぜ?」
「前線に出たことがない奴に戦闘を教わることが有益だとは思わない」
「私がいつ君をこの学園に生徒ととして迎えるといったかな?」
「なに?」
小次郎はいぶかしげに学園長を見るが、彼はそれを楽しんでいるようにも見える。
「私は君を教師として雇ったんだよ、狩谷小次郎くん」
「・・なるほど、そういうことか」
それならば納得がいく。日本の学園に生徒として通うのではなく、教師として雇われるのならば細かい素性はいらない。
必要最低限の能力と信用があればいいわけだ。
「学園長、質問していいかな?」
「増賢でいいよ。あとタメ口もそのままにしてくれるのなら、どうぞ」
「俺の異能ランクはD/0だ。教えられることと言っても体術くらいしかないが、いいのか?」
「その点は君の異能が何かを教えてもらってから、じっくり考えるよ」
「わかった。俺の異能は、
※次回更新 1月14日 火曜日 0;00 「小次郎の異能」
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