第3話 日本にてⅡ

 

 「近年になって戦争が終結してきた影響で、異能者の就職先が自衛隊だけじゃなくなってきたの。そんな異能者の仕事を斡旋するのが異能特務機関よ」


 (管理する、の間違いだろう)


 「ありがとう。ひとまず理解した」


 それだけ言うと、話は終わりだと言わんばかりに小次郎は視線をはずした。


 日本の舗装された道路を静かに車は走っていく。走り出してから30分もすると、大きな建物が見えてきた。


 「見える? あれが日本戦士学園よ」


 「あれが・・・」


 無駄に立派な建物だと、小次郎は思ったがあえて口にはしなかった。


 中に入ると、四方が白い壁に囲まれている広い部屋に連れていかれた。そこには制服を着た女子生徒が一人立っていた。


 「彼女は?」


 「・・・少しここで待っててもらえる?」


 麻子は申し訳なさそうにそういった。


 「わかった」


 麻子が出ていくとおもむろに女子生徒が口を開いた。


 「あなたが転校生?」


 「・・・・そうだ」


 「異能のランクは?」


 異能者はその異能の事象干渉能力によってランク付けされている。上から順にS、A/0,1,2,3,4,5、B/0,1,2,3,4,5、C/0,1,2,3,4,5、D/0,1,2,3,4,5級となっている。これらは異能者が皆つけているドッグタグに掲載されている。


 「D/0級だ」


 「ぷっ、そ、そんなランクで傭兵なんてしてたの? 馬鹿じゃない?」

 

 そんな挑発も、小次郎にとっては警戒心を高める要因のひとつにしかならない。


 「今まで生き残っただけで十分だよ。それに戦闘能力と異能力は必ずしもイコールじゃない」


 小次郎はそれだけ言うと、首に下げていたをはずし、女子生徒に放り投げる。


 「どうせ俺の力試しでも頼まれたんだろう? こいつを見てからやるかどうか決めな、お嬢ちゃん」


 傭兵もその功績によって、異能と同じようにランク付けされている。


 「はあ? 誰がお嬢ちゃんよ! 別に見なくてもいいけど・・。そんなに言うなら」


 女子生徒は渡されたドッグタグを見てみる。見た瞬間、目が見開かれた。


 「え? こ、こんな・・。うそでしょう⁉」


 「軍の評価が間違っていることはまずない」


 「だ、だけど、これは」


 「不自然だと?」


 「あ、あたりまえよ!」


 女子生徒はドッグタグを振り回す。そこにはこう書かれていた。


 ・異能ランク D/0級


 ・傭兵ランク A/0級


 「さて、」


 小次郎は荷物をその場におろす。構えたりはせず、自然体で軽くこぶしを握る。


 「俺はどこまでやっていいのかな?」


                       ※次回更新 1月7日0:00

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