3-7
なんて
このまま突破を許せば裏口から出て行ってしまう。英二は木下を床に横たえると、彼女の手を腹の上で組ませた。死んではいないのだが。捕獲用の網を握りなおし、英二は立ち上がる。決着をつけるために。繋いだままの携帯の向こう側ではヒバリがそろそろ切ってもいいだろうかとワリと真剣に悩んでいた。
すねこすりを追い、走り出した英二におばちゃん達の
「
一際恰幅の良いおばちゃんの一人が近くにあったフライパンの柄を掴む。
「厨房に入るんじゃあないよぉぉぉぉぉぉぉ!!」
そのままフルスイング。「ギャン!」っと短い悲鳴を上げ打ち返されるすねこすり。英二は咄嗟に網を伸ばすが、僅か数ミリ先をすねこすりは飛んでいく。振り出しに戻るのか。英二の顔に疲労と諦めの色が浮かぶ中、その男が現れた。
「ここかァぁぁぁ!」
暑苦しい事この上ない男の直線上を飛ぶすねこすり。当然この男はそんな事を知る由も無い。
「へぶぅ!」
突如顔面を襲った激痛に間抜けな声を上げながら、男は仰向けに倒れていく。マッチョの矜持だとでも言うのだろうか、男は倒れながらもカッと目を見開いた。その目が自身を倒れさせる原因を視界に捕らえた瞬間。男は頬を朱に染めながら、すねこすりに丸太のように太い腕を伸ばす。男から何とか逃れようと手足をばたつかせるすねこすりをものともせず、そのまま分厚い胸板を使ってがっちりホールド。受身もとれず背中からもろに倒れこみ、かなりの痛みがあったはずだが、男の顔はどこか幸せそうであった。
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