3-6
走る、走る、走る。職員室を通り抜け、用務員のおじさんが大切に手入れしている花壇を飛び越え、ひたすら走る。
「英二君、三百メートル先、右へ!」
ヒバリからの指示を聞きながら脳内に校内の見取り図を思い浮かべる。この先にあるのは食堂。昼飯時の食堂はある意味戦場だ。もしここを荒らされでもしたら暴動が起きかねない。それだけ飢えた学生というものは恐ろしいのである。英二としてもこの
「……さっきのは、忘れてよね」
「……おう」
マッチョが教室を出た後、木下も教室を飛び出していた。なんの情報も無い状況でよくこの場所がわかったものだと少し驚いたが、人手が増えたのは正直ありがたい。英二はほんの少し口角を上げ、そのまま食堂へと突っ込んだ。
後一時間足らずで始まる
対する英二と木下は食堂の両端へと散開。身を屈め、顔面を両腕でガード。それでも時折顔面に当たる輪ゴムの地味な痛さに顔を顰めつつ、木下を一瞥する。何処から出したのか、彼女は下敷きでおばちゃん達の銃撃から身を守っていた。
おばちゃん達の
「エージ!!」
木下からもすねこすりが見えたのだろう。すねこすりを追うべく無防備に立ち上がった彼女の額を赤い
「木下ぁぁぁぁ!」
「おい! しっかりしろ!」
「ごめん、やっぱり……私、足手まといだった……」
「そんな事ねえ! そんな事ねえよ!」
「私ね……いつもは……もっと可愛いのを……!」
「わかった、わかったから! もう喋るな!!」
「今日も……可愛いのに……しとけば……よかっ……た……」
力の抜けた彼女の手がするりと英二の手から離れる。二度、三度と身体を揺すってみても彼女の目は開かない。ただ輪ゴムが額に当たっただけなのだが。
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