本懐
佐伯沙苗さんと付き合い始めてクラス
や学年での立場が上がった気がする。いや、実際上がっているのだ。だって他の人からすればクラス一のマドンナの彼氏に仲良くするのは当然だ。
僕は調子に乗ってあまり喋ったことも無い隣の席のやつに話しかけた。
「俺、彼女できたんだぜ!!」
と、
あぁ、自分でもわかってるさ、俺は調子に乗っている。物凄く。
だが、
「あぁ、知ってるよ」
と軽く受け流された。当然だ、ウザかったのだろう。僕もちょこっとだけ反省しながらも今だにテンション爆上がりである。一人称が「僕」から「俺」に変わる程に。
恋愛は初めてだ。でも恋はしていた。
同じクラスの前原りおという女子に。
きっかけは去年の秋、帰りに寄った図書館であった時に一目惚れしてしまった。クラスで目立っていた訳でもないが普通に可愛いと少しだけ男子の中で評判だった女性だ。好きな人と別の人と付き合った理由?そんなの決まってるだろ、クラス一のマドンナを振るなんて勿体ないからだ☆
クズライフの意味が皆様に伝わってきたのではないだろうか。
こうして僕はイキっている人間になった。
今日の昼休憩に早苗が話しかけてくることは無かったが彼女持ちになった僕が見る景色がいつもより明るく見えた。いや、マジで、
智樹も僕が早苗と付き合ったことを報告して驚くやいなや
3人くらいか、そのくらいの友達にイジられた。というか、羨ましがられた。悪い気分では無い、いい気分だ。その時前原りおに一瞬睨まれた気がした。まあ、気のせいだろう。その後部活をしていない僕はすぐに下校した。ただし今日はいつもと違う。何が違うかって?今日はいつもと違って一緒に帰ってくれる人がいる!withmy佐伯沙苗さん!口元が多少緩んでしまったことなど言うまでもない。
「えへへへ」
そして、ついに終学活が終わる。するとすぐに早苗が近づいてきた。
「一緒に帰ろっ、」
優しい声が僕の胸に響く。僕はとても気持ちが舞い上がった。
帰ってる途中緊張で常に顔を向けることができなかった。しかし相手が積極的に話しかけてくれたのでなんとか保つことができた。好きな食べ物は?とか、しゅみは?とか、そんなたわいもない話を。そうして僕は人生で最高な下校を楽しんだ。
家に帰ると何やら重々しい空気が漂っていた。
父がこちらを見ると
「とりあえず座れ」
とだけ言った。何事だろう、なんて考える必要も無かった。
「久しぶり」
母が言った。久しぶりと言ったのだ。そう、僕と母はしばらく会ってなかったのだ。というのも、母は一人暮らしをしていた。詳しい理由は知らないが一人暮らしをしたかったと母は言っていた。そんな母がここにいる。それも重々しい雰囲気を漂わせて、
多分、 離婚だ。
「大事な話があるんだ」
その父の言葉で僕の予想は確信へと変えさせられた。そうして僕は両親に離婚を告げられることになる。
内容は離婚すること、そして僕らはお父さんの元で暮らすことになるだろうということだった。お母さんっ子だった俺は必死になって止めた。僕の様子を見てお父さんも一緒になって味方をしてきた。どうやら離婚の提案は母からしたようだ。お母さんは優しい人だ。息子である僕が1番知っている。だから結局2人はまた仲良く一緒に暮らすと思ってた。でも母が発した言葉はこうだった。
「たまには会おうね」
そうして母は僕らを置いて無言で家を出ていった。早く1人になりたかった僕はこの部屋から一番近いトイレへ向かった。高校生の僕は声を荒らげて大粒の涙を流した。
小学生の頃、僕がプレゼントした手紙が母の机の引き出しから無くなっていたことを知り、少し安堵した。僕らのことを大切だと思っているからだと思い、そのことだけがこの状況で唯一僕を喜ばしてくれた。
僕はラノベ主人公です。 イツキ @nyancoadachi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。僕はラノベ主人公です。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます