学園編~前編~
入学試験
国立カルスニア学園
先代国王主導のもと設立された育成機関で、国内で随一の規模の設備が整っている。学費は全て国が負担し、ここを卒業したならば将来は約束されると言われる程だ。そのため入学希望者は多く数日間に渡って試験が行われ、その期間中、街はお祭り騒ぎでかなり賑わうらしい。
学生は全員寮での生活になるのだが、大きな街のそばにあるので生活に困ることもない。十六歳以上の者から入学できるのだが、年齢の上限は規定されておらず二十歳を超えた学生も少数いることが特徴だ。
そんな学園の入学試験は基本的に大きく二つに分けられている。
始めに学力検査、最後に魔力検査があり、それらを基準を上回る点数をとらなければいけない。
ただし例外がある。
それはステータス値が大きく他を上回っている場合だ。その場合、入学試験が免除となり無条件で特別クラスに入ることになるのだ。
つまり俺は入学試験を受けるが、アリシアさんは受けなくても良いのだ。
万が一何かあった場合はあの王様がなんとかしてくれると思うけど、基本は自力で合格したいと思っている。
「メディくん!ここは賑やかな街ですね。王都のほうが大きいですけどっ」
そして俺は入学試験を受けるために馬車で学園がある街、アデクという場所に来ている。王都からの距離も短く、街中にダンジョンがあることでも有名だ。
そのため冒険者や冒険者を支援する施設がたくさんあり、王都に迫る勢いで急成長している。なのでアリシアさんは少し対抗心を燃やしているみたいだ。
「アリシア様、もう到着するみたいですよ」
建物の影になって見えていなかった校舎が姿を表し、大きな校門の前で馬車が停まる。
すぐに外に出て降りようとしているアリシアさんの手を取り、バランスを崩さないように支える。
くぅー!!!このシチュエーション憧れてたんだよね!まさか本物のお姫様にできるなんて感無量だ。
「ありがとう」
ニコッと俺に、太陽のように眩しい笑顔を向けてくる。笑顔を向けられた俺は、心臓の鼓動が跳ね上がった。
いつまで経ってもアリシアさんの行動にはドキドキする。年下の女の子に緊張するのは、決して女性経験がないからではない。アリシアさんが可愛すぎるのだ。
「いえいえ」
そう返すのが精一杯で目を逸らしてしまう。慣れる日は来るのだろうか。
さて、今俺たちが降りた場所は学園の北口に位置する校門だ。
実は入り口が貴族と庶民でわかれており今俺たちがいる場所が貴族の入り口で、反対側が庶民の入り口になっている。一緒の入り口になるのはどうしても貴族からの反発がありで別々になっているそうだ。
校門をくぐり、校舎の前にある受付を済ませるとアリシアさんは別の部屋へと案内されてしまった。取り残された俺は仕方なく試験の会場へと向かった。
「はぁぁぁ……」
深いため息をつきグッタリと机に伏せ、肩に入っていた力を抜いてリラックスする。学力検査が終わったことで一安心といったところだ。
では何故ため息をついたのかというと、周りが貴族のお坊っちゃんだらけだからだ。どことなくギスギスとした空気が張っていて一刻も早くこの場所から出ていきたい。
しかしそんな願いも叶わず、魔力検査は呼び出された順番に行われるので俺の席の位置から考えると後のほうになるだろう。
待つこと十数分。俺の名前が呼ばれたので立ち上がり、試験官の後ろについていく。案内されたのは闘技場のようなところだった。
「こちらで待機して、呼ばれたら向こうの線のところまで行って番号と名前を言ってください。」
そう告げられると試験官はどこかへといってしまった。
左右を見ると俺と同じく待機している人がいた。みんな緊張しているようだ。今のうちに深呼吸しておこう。すぅー。はぁー。よし!気合いは十分に入った。
「次!!」
いつの間にか前の人がいなくなっており、とうとう自分の番がやってきた。
「三百五十一番、メディ!」
地面に書かれている線まで行き、番号と名前を言う。こんな事をしていると高校の体力測定を思い出すな。
「よし、ではまず…火の属性を持っているようだけど魔術は何か使えるかな?」
俺のステータスだろうか、紙を見ながら聞いてくる。
「はい、火球が使えます」
俺は今まで魔術と魔法の両方を練習してきた。ステータスに魔法の適性が無いんだから怪しまれないように魔術を学ぶのは当然のことだろう。
「なるほど。じゃあその火球を最大火力であの的に向かって打ってみてください」
二十五メートル先に丸い形をした的があった。あれを狙うのだろう。
俺の最大火力というと周りに被害がでてしまうが、この検査内容は想定済み。このときの為に魔術の威力練習をしてきのだ。おかげで今ではバスケットボール程の大きさまでに絞ることが出来るようになった。今回はこのぐらいでいいだろう。
「【火球】」
魔術を発動させるための呪文を唱える。唱えなくても発動するが一般に寄せるために一応唱えておいた。
魔力を練っていきその塊に火の属性を与える。するの手のひらの上に浮かんでいた魔力の塊が燃え始め、想像通りの大きさになる。
「おぉ、これはなかなか」
「ふむ」
試験官たちから感心する声が上がり、自然と注目を浴びる。
「はぁぁっ!」
そんなことは気にせず火球を的目掛けて投げつける。
放たれた火の玉は一直線に進んでいき、的で爆発する…と思いきや貫通してしまい後ろの壁に衝突してしまった。
「あっ…やっべぇ」
想定していたよりも的が弱かったみたいだ。試験官たちも目を見開いて驚いている。
「えー…えっと、これで魔力検査は終わりになります。今日はお疲れ様でした…」
ハッとして正気に戻り俺に帰るように促してくる試験官。
これ帰っていいの…?
結局、することがなくなった俺はトボトボと闘技場を後にするのだった。
メディが去った闘技場では試験官たちか確認を取り合う様に話していた。
「さっきの…メディとか言う坊主だが、あいつは火球を使ったんだよな?」
濃いヒゲをはやした高校の教師にいたら体育が似合うであろう、中年の男が尋ねる。
「えぇ、その筈です。しっかりと詠唱も聞きました」
肯定したのはメディを担当したまだ若い、女試験官だった。
「しかし、やつのステータスを見る限りあれ程の威力を出せるとは思えんのだが。結界に傷が付くぐらいだぞ?」
男が指す方にはプラスチックの様な軽い音がする透明な壁があり、そこには何かが当たったようにへこんでいる傷があった。
「術の構成次第でどうにかなるのでは?それに傷を付けたことには変わりありませんし…」
反論されると男は痛いところをつかれたといった感じで、
「む。確かにその通りだな」
「でも確かにこのステータスだとかなり優秀な術を組まないといけませんね…」
「だろう?一応頭の中には留めておこう」
「そうですね」
試験官たちの印象に残ったメディであった。
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