ラストバトル

七機が倒れていく。

その姿が地面にたどり着く前に、幻のように消える。手に持っていたはずの剣は、ボロボロの枯れ木となって朽ちていく。それと同時に拍手が鳴り響いた。

ゆっくりと視線をむければ、一樹の姿をした一機が手を叩いていた。


その横にはツタで絡み取られた二葉姉と七機の姿。捕まってはいるが、体に傷は見えない。ぐったりしているようだから不安はあれど、姿を確認できたのは大きい。


「よく。気づいたものだ。大人しくどちらかを刺せばよかったものを」

「一樹の声だけど、違うもんだな」

「こやつの体はすでに我の物。何をしようと関係はない。しかし、自身のパートナーを躊躇いなく斬るなど。狂人じみているな」

「あんな完成度の低い幻で騙そうとするほうが悪い」


怒りを込めて、歩を進める。

一歩踏み出すごとに心臓は大きく鼓動する。恐怖の鎌が首に添えられている気がしてならない。少しでも気が緩めば動けなくなること必至だ。


「まず。あの状況で、七機は俺に剣を渡さない。選ばせることはあっても、俺に斬らせることはない」

「ただの甘ちゃんか。そんなものでよく生き残ったものだ」

「七機は、自身を俺の剣だと思っている。それに誇りを持ってくれている。だから信じるんだ。その言葉の全てを」

「力を持たぬ人の戯言よ」

「力は、あるさ」


右目に意識を集中させる。

借り物ではあるが、これも立派な俺の力だ。


「ぐっ!?」


痛みが、脳を貫いた。

立っていられない痛みに、膝をつく。


未来が、見えない。


「はっはっはっ!! その右目のことよく知っている。我はーーいや、この体は左目を持っているのだからな」

「なん、だと。だが、それとなんの関係がーー」

「ある。この左目は時を操れる。無機物限定ではあるが、確定した未来を揺るがすには十分すぎる効果を発揮する」

「くそが!!」


未来の可能性。それの一番近いものが瞳に届くこの目の性質上。複数の未来を同時に見ることはできない。処理できないほどの未来があれば、痛みが押し寄せてくるってことなのか。


「さぁ分かるだろう。勝機などないことが。それがわかったのなら、大人しく軍門に下れ。そして、この世界を浄化する手伝いをせよ」

「なんで、俺を?」

「貴様がいなければ七機は消える。このような戦力を無駄に消費するのはおしい」

「なるほど。はぁやっぱり、残ってないのか?」

「幾度叫ぼうと、この体の所有権は渡さぬ」

「そーかい」


いいことを聞いた。

それなら、やりようはいくらでもあるではないか。


「なら、とことんぶつかるか。俺の意志とお前の意志。どちらが強いをここで決める」

「意気がるなよ」


一機の周りにある気がうねりだす。

ゆらりと立ち上がり、片手で顔を覆って笑う。笑ってのける。


最後の戦いを、始めよう。

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