朝日
変化がないまま、朝日が昇る。
世界が明るくなっていく様子を見つめながら、押し寄せる不安を心の奥底に封印する。
「大丈夫。かな?」
「信じるしか、ないだろう」
結界がない今。俺たちが空を飛んでいることも、巨大な土人形が戦っている姿も、木の塊が転がり落ちそうになっていることも知られていることだろう。
彩乃がネットを調べたら、トレンド欄には大怪獣バトルのような写真と共になんかやばいの文字があった。ランキングでは一位である。
どこから聞きつけたのか見に来る人もチラホラ見えた。ヘリすら飛んでいる。ただ、俺たちの真隣を通り抜けても気づかない様子を見るに、俺たちのことは気づいていないようだった。
もしかしたら、空を翔ける右足には姿を隠す効果もあるのかもしれない。
「七機ちゃんから、連絡は来た?」
「全くだ。阻まれてるのかもしれないけど、なんの反応もない」
「私も。どうしよう?」
「ここでしっぽ巻いて逃げるってか?」
笑ってみせる。
乾いた笑いを浮かべながら、想像の中では街が破壊され尽くす光景が浮かぶ。
右目にそれが映らないことが救いだ。映ってしまえば、もはや打つ手もない。
「そういう選択も。あるよね?」
「あっても、選ばないだろ。俺も、彩乃も」
「……うん」
(お兄ちゃん。聞こえる!!)
「七機!!」
思わず声を出す。
その声に驚いたのか、僅かに揺れる。悪いとジェスチャーしてから心の中で返事をする。
(大丈夫なのか?)
(大丈夫だよ。それよりもお兄ちゃん。無茶を言っても、いいかな?)
(なんでも言え。俺にできることなら何でもする)
(ありがとう。じゃあ、道を開くから一人で来てくれる?)
(一人で、か?)
(にゃはは。ごめんね。だけど、五機は外にいて欲しいからさ)
(分かった。すぐに行く)
どこまで信頼していいのか。
もしかしたら、敵に操られている可能性すらある。
だけどーー
「彩乃。俺は中に行く。近くまで……土人形の所まで連れて行ってくれ」
「うん。いいよ。五機から聞いたから」
「悪い」
ふふっと笑いながら空を滑空する。
押さえて動かなくなっている土人形の肩に乗ると、五機がひょっこり顔を出した。
木の塊を指差すと、胸の部分から滑り台が生まれて中に入る道を作ってくれた。
これで行け。そういうことなのだろう。
ありがとうと感謝だけを述べて素早くそれを滑る。
そしてーー
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