不安

スマホのライトで辺りを照らしながら空を駆ける。

正確に言えば、彩乃に連れて行ってもらっているのだから自分の力ではない。空の移動はすごく楽で助かる。

街灯すらも消えた夜の街は少し不気味だ。時間が遅いと消してしまうのは昔と変わってない。都会と違って人が出歩かなくなる時間がある。街が眠りについていくのだ。


「なんだか、不思議です」

「なにが?」

「街って、こんなに暗くなるんですね」

「そりゃ都会に慣れたら珍しいわな」


所々で家に灯りがあるものの、全体で見たら少数。常にネオンの灯りがある都会と比べられても困るというものだ。


暗くなるからこそ、空にある星々を見ることが出来る。都会では見られないそれらは時を忘れるほどに雄大だ。


「もうすぐ着きますけど、どうしますか?」

「離れて様子を見よう」


下手に近づくのは危険。

なので、視界に入る位置で一度止まる。スマホのライトでは届かない。懐中電灯を持ってくるべきだったか?

気持ち悪くなる可能性を考慮に入れながら、右目に意識を集中させ、片眼鏡を出現させる。


「凄いな。これ」


闇の中なのに、塊がくっきりと見えた。あれは、木が重なり大きくなっているようである。頭痛はない。気持ち悪さもない。

なんであそこまで体調を崩したのか分からないくらいだ。


視界の中では、巨大な土人形が襲いかかろうとして迎撃されているところを映していた。これを知っていてなお、七機たちは強行するのだろう。あの中が地獄だと分かっていても、俺の信念を通そうとしてくれるのだ。


「悔しいな」

「出来ることをしましょう」

「分かってる。だけど……」


現状、それが見えてこない。

俺たちは神の力。その一端を手にしていても基本的にはただの人間に過ぎない。戦闘能力で測るならば、コッペリアンの足元にも及ばない。

前の戦いだって、基本的には見ていることしか出来なかった。運良く見つけた鍵が上手く作動した結果? まとまったに過ぎない。


あの時も、命懸けだったけどな。


死の寸前まで行ったあの戦いで得られるものもあったはずなのだ。


(お兄ちゃん)


聞こえる。七機の声が、想いが届く。


(行ってくるね)

「行ってこい!」


信頼して、押し出す。

今の俺に出来ることなんてそれくらいだ。信じて、待つしかないのだ。

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