破壊
巨樹を真っ二つに破壊したそれは、土の巨人だった。
巨樹に対抗するために巨大化した土人形が、内側からそそり立ち、回復する暇も与えずにメキメキと破壊していく。
「上手くやったのか」
「うん。下層の方に土を見つけてね。何とかなった。って感じかな後は五機に任せたけど、おっきくなったね」
「あれぐらいは必要なんだろ」
ズキズキと痛む頭を押さえながら、ニヤリと笑ってみせる。
半分になったことで自由を得た七機が土人形に飛び乗る。途中で土を攫い、手のひらで覆いだした。それは一つの武器に変化し、ゴミ不足を解消していた。
リソースを手に入れた七機は土人形から飛び降り、鎖を使いながら器用に移動していく。
手馴れたものである。無くなりそうになったら土人形から土弾が発射されて別の武器に変化させている所を見ると戦術が噛み合っているようにも思えた。
「相性。良さそうだな」
「ですね」
その一部始終を観察してから俺たちは少しずつ移動している。目標は一樹たちの居るところである。
あの巨樹の中心に居たはずの一樹たちの姿が見つからないのだ。木の結界を作っていると思ったが、それも解除されているようである。
どこに行ったのか。視線を動かして必死に探す。
居ない。どうしてだ?
嫌に胸がざわめいた。悪い予感しかしない。
「彩乃。その」
「移動します」
以心伝心しているかのように、俺の行きたい方へと移動してくれた。
ありがたい。おかげで、集中して探すことができる。
巨樹は、その原型を保っていない。もはや回復する気配すらない。そのことが、不思議でしかない。なにせ、今までは何をしてもすぐに回復していたのだ。それこそ、時が巻き戻っているかのように。
それが、なくなった。その理由として上がるのが一機の封印解除だ。
要であった一機が一樹へと宿ったから、回復能力を無くした理論。
「有り得るが、だとしたら、二人はどこに?」
巨樹の枝が地面に向かって落ちていく。それが、空中で腐っていき、どこかへと消える。
これが現実世界に落ちたら被害が最悪だろうなと思う。故郷が謎の巨樹に破壊される姿を見たくない。しかも、その原因を作ってる張本人だと知られたら……
怖すぎる。そうなってないことを祈りながら、小さく破壊される巨樹を見つめる。
ずっと、見つめる。痛む頭。気持ち悪さを抑えて。
そして、破壊されきった巨樹。そこには、二人の姿が確認出来なかったーー
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