動き出す
それが視界に入ったのは偶然だ。
ただ、少しでも多くの情報を得ようとした結果でしかない。だけど、それは最悪でしかなかった。俺たちの計画を根本から覆すような出来事に足を止めた。
「七機、二葉姉! 下がって!!」
届くか分からない大声。
それでも叫ばずにはいられなかった。俺の目が捉えたその姿は異様であり、今の俺たちには太刀打ち出来ないと本能が告げたのだ。
七機が外へと飛び出し、俺と合流する。だけど、二葉姉が出てくる様子がまるでなかった。
「二葉姉。どうしたんだ!!」
叫ぶ。
叫んでも、反応はない。七機は何も言わず、俺の手を握りしめてその場を離れそうとする。
抵抗はした。体格では勝っているのだ。なのに、俺の体はゆっくりと移動した。七機の力に勝てずに強制的に移動させられる。
「どうして!!」
「今は、これが最善なんだよ」
血を吐くように言葉を紡いだ。
悔しそうな横顔が、手遅れであったことを物語っている。
「くそ!!」
吐き捨て、七機と共に離脱する。
巨大なドームとなったその部屋は俺たちの侵入を拒む。無限再生する木に守られたそこに入ることはもはやできない。
二葉姉を失っただけ。俺たちは、対抗策をなくしてしまったのだ。
「七機。これも作戦なのかよ」
「順調に進んでるよ。お兄ちゃんに伝えられなかった作戦のほうだけどね」
「くっ」
作戦は二種類あった。
一樹を救う作戦と救わない作戦。前者は、細い細い道を綱渡りのように進んだ上で運も味方につけなければならない危険な作戦。後者は簡単ではあるが、実力次第では難易度が跳ね上がる作戦。
前者については、俺も懸命に話した。だが、後者の作戦は、余計なことを言わないでほしいと俺は彩乃と自分たちの作戦を詰める時間に当てられていた。
だから、内容は分からない。どんな結果になるか不確定だ。
「彩乃。頼むぞ」
彩乃だけが頼りだ。
動き出してしまった状況はもはや止めることはできない。
だから、新たな刺激が必要なのだ。全てをひっくり返すような凄い刺激が……
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