強者たる

どのくらい。時間が経ったことだろう?


膠着状態となった戦闘は、こちらにばかり消耗させる。

大量に持ってきたはずのゴミでさえ、もはや手元に残っていない。壊されてなくなった武器は数知れず。避けきれずに軽い傷を負うことも増えてきた。


七機はもう限界だ。


それが分かっているのに、俺は何も出来ない。送る未来だってコマ送りではなく早回しの状態。長年培われた勘だけで回避を成功させているに過ぎなかった。


近くに落ちたゴミはすぐさま枝に絡め取られてどこかに取り込まれていく。木を素材にしようとして斬ってもすぐに再生する。


強すぎる。

圧倒的な力だ。環境も味方しているのだろうけど、ここまで一方的になり近付けもしないとは思ってもみなかった。


早く。早くと焦る心を必死に抑える。


慌てても意味が無いのだ。冷静に、冷静に状況を七機に伝えるのだ。


「お兄ちゃん!!」

「ちっ!」


またしても距離を取る。

範囲が徐々に広くなっているのだ。そのせいで、もはや壁の端にまで追いやられている。

七機が早々に気づいて声をかけてくれなければ、俺はとっくの昔に捕まっていたことだろう。男が木に絡め取られるシーンなんて誰が得するんだよ。薄い本だって大抵女性がやることだろ。男性版見てないだけだけど!!


体勢を整えたい気持ちはあるが、もう少しのはずだ。両方でなくとも、どちらかが間に合えば少しは動くはずなのだ。


だから……


「お待たせしました」

「二葉姉!!」


これで、前に進めるはずだ。


「まずは、あの子を助けます」

「力使えるんですか!」

「練習してきました」


体が、ブレた。

それは、二葉姉が二人に増えたように見えたからだ。目を擦ればそんなことは起こっていない。変わらず一人だ。


伸ばした手が、襲いかかろうとする木に触れる。


ドロリ。と、溶けた。液体になったかのような錯覚。

回復力を失った木をそのまま投げた。


「ありがとう」

「どういたしまして」


受け取った七機が武器を作り出し、攻勢に出る。二葉姉が手を指揮者のように振ると、どこからともなく樹液ゴーレムが現れて一機の作り出した結界を襲いだす。


これが、封印していた二葉姉の力なのか。


間近で見るその実力に俺は拳を握りしめる。

どこまで行っても傍観者であることを止められないのだと、宣言されているようであった。




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