敵の正体
逃げて逃げて、やってきたのは二葉姉の本体が居る場所だった。
ここに来るまでの道は全て塞がれ、一本道になっていた。外に出られるはずの道もなく。完全に閉じ込められた形だ。
大きく肩で息をしながら腰を落とす。
全速力で走る意味があったのか不明だが、急かされた。七機や五機がそうしたのだから意味はあるのだろうけど、説明はされていない。説明を聞きたいなら走れ。という感じだったのだ。
「なんなんだよ。ここも、一樹も」
「コッペリアンが作用してるってことは確かだよね?」
「それは分かるけどさ。あいつだって観測者だった。けど、なんでいきなり」
俺たちそっちのけで相談をしているコッペリアンの三人。蚊帳の外と化している俺たちは息を整えるしかやることがなかった。
「これから、どうなるのかな?」
「どうもこうもないだろ。なるようにしかならない。あっちもそうだし、この状況もな」
「うん。でも、怖くないの?」
「炎の魔人とやりあった後だぞ? 何とかなるだろうし、何とかするんだよ」
「うん……」
不安いっぱいの表情。
さっき見た映像が現実になっていれば、不安だけでは終わらなかったはずだ。
あの一撃で五機が戦闘不能にでもなってみろ。彩乃は立ち上がれなかったかもしれない。
そういう意味では、二葉姉には助けられた。なぜ、助けてくれたのか。話し合いに協力しているのか。それを聞かなければ今後のやるべき事は見えてこない。
息も整ったので立ち上がる。彩乃はまだ駄目のようなのでここに留まってもらい俺はコッペリアンの方へと移動した。
「話し合いは進んでるのか?」
「あーお兄ちゃん。ちょっと難航中かな」
「もはや手はないですからね」
コクコクと五機も首を縦に振る。
「状況は俺の見立てより悪い感じか?」
「うん。相当悪いよ。まさか、一番が覚醒するなんて思わないし」
「一番。一機ってことか?」
「そう。寝てるはずだし、契約を結べるような人がいないから大丈夫だと思ってたんだけどね」
「特殊契約ってことか? 俺や彩乃とは違う」
「はい。特別な契約です。わたくしがやっているように、意識と混ぜ合わせるので……その、最悪乗っ取られます」
「なっ!?」
「二機は、その意思が弱いからこそ、観測者に知識を渡して委ねてくれるんだけど、一機は強い恨みを持っているから、むしろ乗っ取ってくるんだ。それに対抗できないと精神が破壊されて肉体も手放すことになる。切り札だけど鬼札と言われるのはそれが原因。肉体が滅びるまでしか戦えないんだ」
「じゃあ、一樹は……」
「残念だけど」
横に振られる首が現実を伝える。
もはや手遅れであると、助けるすべは、ないのだと。
絶望感が胸を貫く。
俺は、どうすれば……
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