一番の能力

「本当に、助けられないのか?」


目の前にあるのは諦めの選択肢のみ。

歴戦の猛者であるコッペリアン三人はそう決断し、どうやって攻略するかを話し合っているはずだ。その難易度が高いからこそ難航しているのだろう。


それに、一石を投じるのはどうかとも思った。思ったけれど、口を閉じずにはいられなかった。


俺は、親友であり幼なじみである一樹をここで失いたくはなかった。あいつの人生を、巫山戯たコッペリアンに乗っ取られて終わりにしたくなかった。

だから……


「そっだから、難航中なんだよ」

「えっ?」

「わたくしと七機は助けるつもりですよ。五機は一度失いかけた命だから従うと言ってます」


コクコク頷く五機。


話し合いの方向がそっちに向いていることに耳を疑った。だけど、嘘は言っていないことは確かだ。七機は、俺に嘘を言わない。


そっか。と、腰を落とした。


「でもね。方法が思いつかないんだ。だから、残念だけど。ってなったわけ」

「それだけ強大ってことだろ。なら、やれることをやるだけじゃないのか?」


手札の枚数はそんなにないと見える。そもそも、この中で一番の防御力があるはずの土ゴーレムがまるで歯が立たなかったのだ。それだけこちらには伏せ札が減っているはずだ。


そもそも持ち札の大半が死に札なのだ。彩乃の空中移動も五機の土ゴーレムもこの狭い空間であり土の少ない場所では最大の効果を発揮しない。二葉姉の能力で何とか出来るなら、話は変わってくるが……


「二葉姉の肉体を動かしたらどうなる? 観測者としての神の力とか」

「わたくしの力はこの身にコッペリアンを宿し、外に出すことですので、例え肉体に戻ったとしても戦力は変わりません。むしろ、弱点が増えるだけです」

「色々な可能性は考えたよ。それでも、道はないんだ」


「分からねぇだろ。検証を急ぐぞ。一番の能力からだ!」


諦めるな。

考えを止めるな。

道は、歩んだ先にしかできないのだから。

後悔は、振り返った後にすればいい!


「一番の能力は樹木の成長だね。この樹を作り出した張本人。今でも、この樹は見えないながらに成長している」


ポツリと、七機は説明してくる。

なら、先程土ゴーレムを貫いたのは成長した木ってことになるのか?

だとしたら、この場所にいるだけで不利ってことになる。


「外に出ても変わらないよ。どこにでも生やせる。木が生える環境ならね。だから、水の上くらいじゃないかな。弱点になる場所は」

「近くにあるけど連れてはいけないな」

「うん。それに、やろうと思えば人にも生やすから掴むのも危険。対抗策は、二機だけ」


「はい。わたくしの力は枯らすものです。ですから、この樹を枯らしながら成長を止めていたんですよ」


「あの樹液ゴーレムは?」

「防衛機能のようなものです。わたくしは、それを無理矢理に使っていたに過ぎません。コントロールはわたくしにありましたので」


聞けば聞くほど頭がこんがらがりそうな説明である。

俺だけの頭では無理だ。なら、どうするか?

答えは簡単だ。


「彩乃。来てくれ」


頭を増やす。思考を回すのだ。


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