眠い朝

方針は決まった。

決まったのならば行動あるのみ。なのだが、時間が時間だったために一度帰宅してから翌日に開始することになった。

俺の両親がやっている店で晩飯を食べ、彩乃を紹介したら泣いて喜ばれた。

彼女として紹介したのではなく。あくまでも友達として紹介したにも関わらず、だ。


理由は分かる。


今まで女友達を連れてきたことがない。それどころか、中学生になってからはずっと女性とは疎遠になっていた。そんな俺が仲のいい子を連れてきたのだ。親としては嬉しかったのだろう。これで恋人を連れてきたらどうなるのか不安でならないが、二人は彩乃のことを娘のように扱うので、完全にそんな目で見られているのだ。


困惑する彩乃に平謝りすることしか出来なかった。ほんと、勘弁して欲しい。


そんな一夜を過ごし、朝になった。

時間は限られている。行動するなら早い方がいいと、日が昇るくらいの時間に動き始めた。


「眠い」


早出と同じ時間。昨日は早く寝たのだが、体は惰眠を求めてやまない。

軽く体を動かしながら起きようとするも、瞼はくっつくこうとしてくる。フラフラとした動きでわけも分からない体操を繰り返していると、彩乃が部屋から顔を出した。


「ぶっ!?」


目が一気に醒める。


何せ、ほとんど下着姿でトコトコと歩いているのだ。慌てて近寄り、部屋へUターンさせる。

寝巻きなのだろうが、生地が薄すぎてほとんど着ていないようなものだ。


「何やってんだ!?」

「ふぇ。せん、ぱい?」


辺りを見回し、自分の姿を確認し……


「きゃーーーーーー!!」


思いっきり平手で叩かれる。

痛みに涙を零しながら部屋から逃走。扉を強く閉めると追撃が来ないように警戒する。


「何やってるの〜?」

「事故だ事故!!」


頬についたモミジにニヤニヤした笑みを浮かべる七機。さっきまで近くに居なかったはずなのに、一体どこに居たのだろうか?


「五機は何やってたんだよ」

「五機なら、僕と一緒に散策してたよ。情報は大事だもん」

「ありがとよ」


それは大事だ。凄く大事。

俺だって彩乃の下着がちょっと際どいタイプなんだなって情報を入手してしまって心臓のドキドキが止まらない。


中からの攻撃は来ない。耳を澄ませても音が聞こえない。七機に中を確認してもらうために手信号を送ると、仕方ないとばかりに中へと入っていく。

扉から離れてしばらく待つ。


「すいません」


空から静かに着地した五機が謝罪を述べた。状況は把握しているようである。

別に謝って欲しいわけではない。むしろ、謝るのはこっちだろう。割とガッツリ見てしまったし……


「お待たせ、しました」


顔を真っ赤に染める彩乃が出てきたのは、それからしばらくしてのことである。

互いに何も言えず、頬を朱に染めたまま行動を開始する。


平静を保てるのか、本気で不安だ。心臓が口から飛び出そうなくらいに高鳴ってどうしようもないんだけど……

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