報告
有給について相談してから数日。次長に話すと比較的簡単に了承を貰えた。諸々込みで一週間の休みを彩乃と同じタイミングで取るなんて難しいと思っていたが……ニヤニヤしながら受け入れてくれた。
明らかに変な勘繰りがあるのは分かった。分かったけれど、スルーすることにした。隣で揶揄う七機が楽しそうにしていたけれど、何が楽しかったのかは教えてくれなかった。
「ず〜る〜い〜」
そして、今。ミライの家で今後の予定を伝えに行けば駄々っ子のように手足をバタバタさせながら部屋をグルグル回る。
成人済みの女性がやるべき行動とは到底思えないけれど……ミライだからな。よくあることだ。
ゴミをポイポイと袋に投げ込みながら、ミライもこの袋に入れたら持って行ってくれないかなと真剣に考える。
「先生と彩乃ちゃんの二人旅行なんてずーるーいー」
「二人、かぁ」
実際には、七機と五機が居るので二人旅行ではない。だからなのだろう。実家に帰るのにまるで緊張がない。両親の説明も頼れるホールスタッフと言うつもりだ。なぜか、みんなカップルにしたがる。男女間の友情は有り得ないそうだ。
「お兄ちゃん。それが通用するのは小学生だけだと思うよ?」
(嘘だろ……)
「洗濯物。やっと終わった〜」
「ねぇねぇ。あたしも行きたい〜」
「絶対駄目」
バッサリと切り捨てると、お腹がペロンと捲れた服を直す。ズボン履いてたから下に関しては問題無かったけど、上はガードを下げて元気に動き回っていた。
早くいい人を見つけてほしい。そして、だらしない生活を改めてほしい。
その場合、同人業は終わることになるだろうけどな。
「なんでなんでなんでなんでなんで!!」
「お金。無いでしょ?」
「むぅ」
すでにチケットは購入済み、方々に連絡もしているのでこれ以上の増加は避けたい。
それに……ミライは最初から連れて行く気はなかった。ミライを連れて行って事故に合ったらと思うと不安でしかない。ちゃんとした格好で歩いてくれる気がしないのだ。
分別くらいはついていると信じたい。信じたいけれど、俺が知っているのはだらしない姿だけだ。駄々っ子のように文句言いながらクルクル回る姿を外で見せたら確実に事故である。
「出世払いは!」
「出世、するのか?」
「酷くない!?」
真っ当に反応しただけなのに絶望感たっぷりな表情で落ち込んでいる。
おかしなことは言ってないはずなのに……
「出世払いって言えばさ。あの人、最近来ないね」
「ああ。一樹か。あいつなら今実家に居るぞ?」
「あれ。そうなの?」
「そのせいで金なくて毎日のようにたかりに来たんだよ。めちゃくちゃ迷惑だったわ」
ホールから「来ましたよー」と報告が上がる度にため息を零していた。いつか回収しないと割に合わない。
しかし……
「なんで、受け入れてるんですか?」
「あいつのやりたいことを知ってるからな」
俺たちの過去に関わることだが、未だに諦めていないのは一樹だけ。だからこそ、応援したくなる。文句ももちろん言うけどな。
「そのために、この時期は実家に帰るんだ」
「聞いても、いいですか?」
「あたしも聞きた〜い」
特に面白い話でもないが……まぁいいか。
二人には過去のことをちゃんと話したことないし、いい機会だ。
俺と一樹。そして……
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