第二章

一樹は求める

オープニング

季節が過ぎる。

多くの出来事が起こり、時間が巡り、夏がやって来た。

最大の祭りはあるが、それのサークル参加権を得ることが出来ず、参加するならお客さんとしてであり、そこまで目当ての品が無いので時間があれば行くかなくらいのノリである俺たちは、恒例のように仕事が終わってから集まっていた。


「先輩は有給どうするんですか?」

「あーそういや、聞かれてたな」


パクパクとポテトを口に放り、時折小鳥のように口を開けている七機の口にシュートしながら考える。


有給は実家に帰ることにしている。遠いのでまとまった休みでないと帰れない。特に何かがある訳では無い田舎だが、帰って一度は顔を見せないと両親が心配するのだ。

けれど、である。


「家帰ってもなぁ」

「何かあるんですか?」

「暇なんだ」


ケラケラと笑う。


「高校が地元じゃなくて少し離れているから友達が少ないんだよ。仲いいのは一樹くらいで、他とは連絡も取ってねぇや」

「先輩……」

「友達居ないわけじゃないぞ!! 高校の時は多かったんだよ。でも、帰っても遊びに行くは家から遠いんだよ」


だから、毎年帰ってはいるが特に何もすることなく惰性で時間を潰して帰ることが常だった。

七機も居るし……せっかくならば有効活用したい。


「なら、帰らないでミライちゃんのお世話?」

「それはそれで嫌なんだが」

「直近のイベントないしね。ミライちゃんは朝から行くみたいだけど」

「地獄観光かな」


灼熱地獄としか思えない状況。ルールを守っているからこそ、事故は少ない。けれど、少ないだけでゼロではない。

人生何が起こるのか分からないものだ。


「五機も食うか?」

「食べる!!」


食わせてやれとポテトをそのまま彩乃に渡してやる。

自分で食べる訳でもないのにドキドキした、面持ちでポテトを手に取ると五機の口に入れる。


「彩乃はどうするんだ?」

「私は特にないよ? 去年も寮で過ごしたし」

「ふうん」


そっか。

有給を取っても暇なのか。


「ならさ、実家来るか?」

「ふぇ!?」

「なんだ? 顔を真っ赤にして」

「お兄ちゃん……」


なんか呆れられてる。

暇なら……ってことで誘っただけなのに、なんでこんな反応されるんだよ。


「先輩の田舎って、遠いですよね?」

「まあな。飛行機で一時間。車で二時間ってとこか。いつもと違う光景は、勉強になるんじゃないのか?」

「確かに、そうかもしれませんが……」

「寝る場所は問題無い。頼める場所あるからな。こっちじゃ出来ない経験出来るぞ」


あまり忙しい時期でないはずなのでお願いすれば大丈夫なはずだ。

はず、だよな?

メールだけは送っておこう。


「お金、どうしましょう?」

「移動費くらいは奢るよ。誘ってるわけだしな」

「わっ分かりました。明日、聞いてみます」

「俺も、次長に聞くか」


上手く調整してくれると助かるけど……無理なら無理で諦めるか。

休みの調整で、いつもヒィヒィ言っているのは知っている。時折愚痴られることもある。俺みたいなのに話してもいいのか? なんて話題もあるけれど、話すのだから大丈夫なのだろう。


「んじゃ決定でいいかな?」

「はい」


俺たちの夏休み計画が完了した。それが上手く行くかはこれからだが、去年と違って楽しくなりそうである。

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