『温泉ガールズサイド-前編-』

『温泉ガールズサイド』



 8月2日、金曜日。

 今日から1泊2日で、静岡県の伊豆地域へ旅行に来ている。私、悠真君、柚月、姫奈ちゃん、胡桃ちゃん、千佳先輩、お姉様、杏樹先生の8人で。

 杏樹先生が運転する車で、姫奈ちゃんの親戚の方が営む旅館・潮風見までやってきて。その道中で美味しいお昼ご飯を食べて。到着してすぐに、潮風見の目の前にある海水浴場で悠真君達と一緒にたくさん遊んで。1日目夕方の今の時点で凄く楽しめている。

 海でたくさん遊んだので、これから大浴場で温泉に入ることに。

 潮風見には混浴温泉がないので、唯一の男の子の悠真君とは大浴場の前で一旦お別れすることになった。水着の着替えを除けば、旅行が始まってからずっと一緒にいたから、ちょっと寂しくて。でも、露天風呂でお話ししようって約束したから、それを楽しみの一つにして温泉を堪能しよう。

 女湯の暖簾をくぐり、女性用の脱衣所に。

 脱衣所にいる人は年配の方を中心に片手で数えるほどしかいない。夕方に温泉に入る人って少ないのかな。

 私達は浴衣や下着を脱いでいく。

 海水浴でのお着替えで6人の裸は見ている。それでも、今までに何度も見たことがある柚月と姫奈ちゃん以外のことをつい見てしまう。特に、胸がかなり大きい胡桃ちゃんと、スタイル抜群で大人の色気を醸し出す杏樹先生のことは。

 衣服を全て脱ぎ、必要なものを持った私達7人は女性用の大浴場の中に入る。

 潮風見に来るのは中1の夏休み以来3年ぶり。結構広い大浴場は変わっておらず、懐かしさを感じられる。


「変わらないね、お姉ちゃん。懐かしいなぁ」

「そうだね、柚月」


 3年前のことだから柚月も覚えており、懐かしさを感じていたか。

 今も年配の方や小さい子連れの親子など、大浴場の中は私達以外には10人くらい。このくらいの人数なら、みんなでゆったりと温泉を楽しめそうだ。


「結構広いね」

「立派だよね、華頂ちゃん」

「旅館らしい落ち着いた雰囲気の大浴場だね」

「そうね、芹花ちゃん。ゆっくりとできそうよね」

「みなさんにそう言ってもらえて嬉しいのです。あちらの方にある洗い場は全て空いているので、そちらで髪や体などを洗いましょうか」

『はーい』


 姫奈ちゃんの提案に、私達6人は元気良く返事した。

 姫奈ちゃんが案内する洗い場エリアには10の洗い場がある。1列に5つあり、互いに背を向けて2列という形になっている。

 片方の列に杏樹先生、私、姫奈ちゃん、胡桃ちゃん、千佳先輩の並びで洗い場の椅子に座り、反対側の列に柚月とお姉様が隣同士で座った。

 私は髪を濡らして、家から持ってきたシャンプーで髪を洗い始める。旅館の大浴場でいつも使っているシャンプーの匂いがすると、ちょっと不思議な気分だ。

 左右からも、馴染みのある匂いが香ってきて。姫奈ちゃんと杏樹先生も家から持ってきたシャンプーで髪を洗っているのかな。


「水着に着替えるときにも思ったけど、結衣ちゃんは本当にスタイルがいいわね。肌も綺麗だし」

「ありがとうございます。普段のストレッチやスキンケアが体に合っているのかな。あとは悠真君のおかげかもしれません」


 キスしたり、スキンシップしたり、たまにえっちしたり。……ちなみに、今夜は泊まるお部屋で悠真君とたくさんえっちをするつもりでいる。えへへへへっ。楽しみすぎてにやけちゃう。


「結衣のスタイルの良さや、胡桃の胸の大きさが羨ましいのです」

「姫奈ちゃんの体も素敵だよ」

「ありがとうなのです、胡桃。あと、杏樹先生も凄くスタイルがいいのです。6月にお見舞いに行ったとき以来に見ましたが」

「スタイル抜群だよね。大人ですから色気も凄いですし」

「ふふっ、ありがとう。教え子の女子高生達に褒めてもらえて嬉しいわ」


 杏樹先生は言葉通りの嬉しそうな笑顔を浮かべる。その笑顔もあって、より色気を感じられて。背丈や体つきは私とあまり変わりないのに。年齢を重ねることで醸し出せるようになる雰囲気があるのだろうか。

 また、お姉様も杏樹先生ほどではないにしろ、大人っぽい色気や艶っぽさがあって素敵だと思う。


「結衣。杏樹先生も一緒に大浴場にいると、修学旅行って感じがするのです」

「分かる。中学の修学旅行では、お風呂の時間に担任の先生や授業でお世話になっている先生が入りに来ていたよね」

「そうだったのです」

「若い先生だと、今の杏樹先生みたいにスタイルいいなって思ってた。大人の女性の体って凄いなとも思ったよ」

「分かるのです。うちの学年は担任を含めて若い女性の先生が多かったのですからね」

「修学旅行……懐かしいなぁ。先生も2人と同じようなことを思ったり、友達と話したりしていたわ」


 懐かしんでいるのか、杏樹先生は優しい笑顔を見せている。あの先生スタイルいいね、って友達と楽しげに話す杏樹先生の光景……何だか想像できるかも。


「そういえば、中学の修学旅行では結衣と背中を流し合ったのです」

「友達と何人も並んで背中を流したよね」


 懐かしいなぁ。中学の修学旅行の思い出の一つだ。


「あたしは小学生のときに友達とやったよ、姫奈ちゃん」

「あたしやったな、華頂ちゃん」

「あたしも小学校の修学旅行でやりました!」

「私も小学生のときにやったな。あと、ユウちゃんが小さいときは、お母さんとユウちゃんと3人並んでやったことがあるよ」

「先生も昔の家族旅行で、母親と妹の遥と3人並んで背中を流したっけ。じゃあ、この7人で並んでやってみる? この7人で一緒にお風呂に入る機会はそうそうないだろうし。今は私達以外にお客さんはあまりいないから」


 杏樹先生のその提案に、私達学生6人は賛成した。

 ただ、7人とも今は髪を洗っている。なので、髪を洗い終えてから、みんなで背中を流すことになった。

 それから程なくして髪を洗い終え、洗った髪をヘアゴムで纏めた。

 周りを見ると……みんな髪を拭いていたり、長い子はヘアゴムで髪を纏めていたりしている。こういう風景も旅行ならではだと思う。

 持参したボディータオルを濡らして、愛用しているボディーソープを泡立てていく。


「みんな、髪を洗い終わってボディータオルを用意できたね。じゃあ、みんなで背中を流そうか」

「じゃあ、一列に並ぶために千佳ちゃんのところへ行こうか、柚月ちゃん」

「そうですね!」


 そう言って、柚月とお姉様は洗い場の椅子から立ち上がって、千佳先輩の所へと向かう。

 お姉様を先頭に、柚月、千佳先輩、胡桃ちゃん、姫奈ちゃん、私、杏樹先生という順番で並ぶ。私は姫奈ちゃんからボディータオルを受け取って背中を流し、杏樹先生に背中を洗ってもらうことに。


「それじゃあ、背中を洗いましょう」

『はーい』


 杏樹先生の号令で、私達は背中を流し始める。

 姫奈ちゃんの背中を洗うと同時に、私の背中にはボディータオルの優しい感触が感じられて。とても気持ちいい。

 姫奈ちゃんの背中を洗っているから、中学の修学旅行でのお風呂のことを鮮明に思い出す。あのときも姫奈ちゃんの綺麗でスレンダーな背中を洗ったっけ。

 3人とか4人くらいでは並んで背中を洗ったことはあるけど、7人では初めてだ。


「結衣ちゃん、気持ちいい?」

「はい、気持ちいいです。姫奈ちゃんはどうかな?」

「気持ちいいのです。胡桃はどうですか?」


 と、まるでリレーのように、私達は一人ずつ前の人に向かって気持ちいいかどうかを問いかける。

 先頭にいるお姉様まで気持ちいいかどうかの問いかけリレーが辿り着いたとき、私達は笑いに包まれた。その声が大浴場内に響いて迷惑かなと思ったけど、他のお客さんは温かな笑顔をこちらに向けてくれていた。

 このままだと最後尾の杏樹先生の背中が洗えないため、途中で方向を逆にする。私は杏樹先生の背中を洗い、姫奈ちゃんに背中を洗ってもらうことに。

 今度は、お姉様から気持ちいいどうかの問いかけリレーが行なわれる。


「結衣。気持ちいいのですか?」

「気持ちいいよ、姫奈ちゃん。杏樹先生は気持ちいいですか?」

「気持ちいいよ」

「良かったです」

「何年も一人暮らししているから、背中を洗ってもらうのが凄くいいなって思うよ」

「ふふっ、そうですか」


 杏樹先生に喜んでもらえて良かった。もしかしたら、背中を洗ってほしくて、みんなで背中を流しっこしようって言ったのかな。もしそうなら可愛いな。

 それにしても、杏樹先生の背中……肌が白くてとても綺麗だな。くびれもしっかりあって。だから、後ろ姿だけど艶っぽく感じて。

 みんなで背中を流し合った後は、姫奈ちゃんからボディータオルを返してもらって体の前面を洗っていく。今夜は悠真君といっぱいえっちするつもりだからしっかりと。胸や腋や太ももなど悠真君の好きな場所は念入りに。

 体、それと顔を洗い終えて、私は大浴場内にある広い湯船に入ることに。既に柚月、姫奈ちゃん、千佳先輩は湯船に浸かっており、気持ち良さそうにしている。

 胡桃ちゃんも同じタイミングで洗い場の椅子から立ち上がったので、胡桃ちゃんと隣同士で浸かることに。

 湯船に腰を下ろすと、ちょうど胸のあたりまで温泉に浸かる形だ。今日は晴れて暑かったけど、海でたくさん遊んだから、温泉の温もりがとても心地良くて癒やされる。


「温かくて気持ちいいね、胡桃ちゃん」

「気持ちいいねぇ、結衣ちゃん」


 すぐ隣で、胡桃ちゃんはとても柔らかな笑顔を見せる。その笑顔を見て、さらに体が癒やされたような気がする。


「結衣ちゃん、あそこにこの温泉の効能が書いてある」

「……書いてあるね。どれどれ……疲労、腰痛、関節痛、肩凝り、冷え性、筋肉痛、神経痛、不妊……いっぱいあるね」

「そうだね。効能を見たら、より体が癒やされる感じがしてきた」

「分かる。今日は海でいっぱい遊んだから、温泉で癒やされよう」

「そうだね」


 あぁ……と胡桃ちゃんは甘い声を漏らし、まったりとした笑顔になる。可愛いな。

 それから程なくして、お姉様と杏樹先生も湯船に入る。温泉の効能がさっそく効いているのか、2人とも気持ち良さそうにしていて。また、並んで湯船に浸かっているから、2人からとても大人な雰囲気が感じられた。

 悠真君は今ごろどうしているかな。屋内の湯船に浸かっているのかな。それとも、もう露天風呂にいるのかな。私達のように温泉に癒やされていたら嬉しい。

 悠真君のことを考えていたら、体だけじゃなくて心も温まっていくのであった。

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