『温泉ガールズサイド-後編-』
みんなで大浴場の中にある大きな湯船に5分ほど浸かったので、今度は露天風呂に入ろうということになった。
「こちらが露天風呂なのです」
姫奈ちゃんの案内で、私達は露天風呂へ。
露天風呂も……3年前と変わっていないな。懐かしい気持ちになる。
「うわあっ、素敵だね! 露天風呂は岩風呂なんだ」
最初に声を上げたのは胡桃ちゃん。素敵だと言うだけあって、目を輝かせて露天風呂を見渡している。可愛いな。
「おっ、本当だね、華頂ちゃん」
「こういう岩でできた露天風呂って、まさに旅館のお風呂って感じがするわ」
「ですね、杏樹先生。湯気もたくさん出ていますし、中のお風呂よりも熱そうです。昔、熱いお風呂に入ったユウちゃんが泣いたのを思い出しますね……」
お姉様が小さい頃の悠真君のエピソードを楽しそうに話したのもあり、私達7人は笑いに包まれる。アルバムに貼ってあった写真で小さい頃の悠真君を見ているから、今のエピソードを想像しちゃう。
「露天風呂も変わらないね、お姉ちゃん!」
「3年ぶりだからね、柚月。結構覚えているものだね。確か、中のお風呂よりも熱かったはずだよ」
屋内よりも温度がちょっと涼しいから、温泉が熱く感じるのかもしれないけど。
「悠真君、もう露天風呂に来ているかなぁ?」
私達はワイワイと話したり、みんなで背中を流したりしていたし。一人で男湯に入っている悠真君は、既に大浴場か露天風呂の温泉を楽しんでいる可能性は高いんじゃないかと思っている。
「呼んでみようか、結衣ちゃん」
「そうですね、お姉様。そっちに悠真君いますかー?」
「ユウちゃん、いるー?」
お姉様と一緒に、竹垣の向こう側に声をかけてみる。
さて、悠真君は男湯の露天風呂にいるかな?
「ああ、いるよー」
「悠真君いた!」
竹垣の向こう側から悠真君の声が聞こえた! 姿は見えないけど、悠真君の声が聞こえたことが嬉しくて、思わず大きめの声で反応しちゃったよ。そのことに、姫奈ちゃんと姫奈ちゃんが「ふふっ」と小声で笑っていた。
「ねえ、悠真君。温泉気持ちいい?」
「ああ、気持ちいいよ。そっちも結構熱いと思うから、気をつけて入って」
「はーい。……じゃあ、入りましょうか」
私が声をかけると、柚月達はみんな笑顔で頷いた。
露天風呂に足を入れて、ゆっくりと浸かっていく。ちなみに、左隣には胡桃ちゃん、右隣はお姉様がいる。
悠真君の言う通り、そして私の記憶通り、露天風呂は結構熱くて。私を含めた何人もが「あぁ……」という声を漏らした。
腰を下ろすと、胸のあたりまでお湯に浸かる形に。最初は熱く感じたけど、段々とその熱さに慣れてきて、気持ち良さへと変わっていく。
「気持ちいいね、悠真君!」
「ユウちゃん、気持ちいいよ!」
私とお姉様が悠真君に向けてそんな感想を言う。
「ああ、気持ちいいな」
悠真君の明るい声が聞こえてきた。柔らかな笑みを浮かべて露天風呂を楽しんでいる姿が目に浮かぶよ。
「あぁ……温泉の熱さが体に沁みるぅ……」
杏樹先生が可愛らしい声でそう言う。先生はちょっと恍惚とした笑顔になっていて。私達7人の中では一番気持ち良さそうに入っているように見える。そして、色っぽさも感じられて。これも大人だからこそ出せる雰囲気なのだろうか。
「さすがは杏樹先生。大人だけあって、一番気持ちよさそうに入りますねぇ」
ニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべて、千佳先輩はそう言う。
「ちょっとからかわれている気がするけど……まあ、気にしないでおくよ、千佳ちゃん。年齢を重ねると、熱いお湯が気持ちよく感じられるようになってね。もう26だしねぇ。あと、海水浴をしただけじゃなくて、ここまで運転したのもあるかな」
「お疲れ様でした、杏樹さん。あと、26ってことは……あたしの倍ですか」
「ってことは、柚月ちゃんは私の半分の年齢か」
「もう、当たり前のことじゃないですかぁ」
妹絡みなので思わずツッコんじゃった。でも、再び私達は笑い声に包まれる。
一瞬、年齢のことなのでまずいかなと思った。だけど、杏樹先生は楽しそうに笑っている。どうやら、先生にとって年齢ネタは地雷ではなさそうだ。安心した。
「そっかぁ。私の年齢の半分の子って、この春に中学入学したのかぁ。まあ、受け持っている結衣ちゃんや姫奈ちゃん達とも10歳違うもんね。そりゃ年も取りますわ……」
はあっ、と杏樹先生は小さなため息をつく。でも、笑顔なのもあって、ため息をつくその姿にも妖艶さが感じられる。私も年齢を重ねると、ちょっとした仕草や行動で魅力的に思われるようになるのかな。
「杏樹さんは素敵な女性ですよ! とても美人ですし、スタイルもいいですし。中学にいる女の先生も、杏樹さんほどの人はいませんって」
柚月は持ち前の快活な笑顔で杏樹先生にそう言う。この春に卒業した中学には若い女性の先生が何人もいるけど、杏奈先生ほどの顔立ちやスタイルの持ち主の人はいないな。
今の柚月の言葉が胸に響いたのだろうか。杏樹先生は感激した様子になる。
「……柚月ちゃん本当にいい子だわ。柚月ちゃんマジ天使。柚月ちゃん抱きしめてもいいですか?」
「もちろんですよ! 嬉しいです!」
そう言って、柚月から杏樹先生に近づいていき、その流れで柚月は先生に抱きしめられた。
「あぁ、柚月ちゃん抱き心地いい! 可愛すぎる!」
とても幸せそうな笑顔で、杏樹先生は甲高い声でそう言った。柚月も嬉しそうな様子になっていて。微笑ましい光景だ。
「杏樹先生に抱かれている柚月ちゃんを見たら、露天風呂で足を滑らせて私の胸の中に飛び込んで、『お姉ちゃんありがとう!』ってお礼を言ってくれたユウちゃんを思い出すわ。あと、今の柚月ちゃんのように、ユウちゃんはずっと可愛い笑顔を浮かべていたな」
「羨ましい思い出ですね! お姉様!」
「ユウちゃん覚えてる?」
「……そんなことがあった気がする」
と、悠真君から力ない返事が聞こえてきた。今のエピソードをお姉様に話されて恥ずかしかったのかな。
確定ではないものの、覚えているようなことを悠真君が言ったからか、お姉様は「ふふっ」と声に出して笑っていた。
「あたしも小さい頃、家族旅行のとき、足を滑らせたあたしを杏お姉ちゃんが抱き留めてくれたことがありましたね」
「あたしも同じような経験ありますよ、胡桃さん」
「小さい頃の柚月は、大浴場ではしゃぐことが多かったからね。私も一緒にはしゃぐときもあったけど」
一緒にはしゃいだときは、柚月と一緒にお母さんに叱られたっけ。
「ふふっ。私も妹の遥が滑って転ばないように手を繋いだことがあったなぁ。遥は可愛いから、今みたいに抱きしめて一緒にお風呂に入ったこともある」
兄弟姉妹がいると、同じようなエピソードを持っている人は多いのかもしれない。
「あたしは一人っ子なので、そういったお話は全然ないのです」
「伊集院ちゃんと一緒だなぁ。あたしも一人っ子だからかな。ただ、小さい頃に大浴場の浴槽に入ったとき、足を滑らせて知らない女性の胸に顔から飛び込んだことはある」
当時のことを思い出しているのだろうか。千佳先輩は微笑んでいる。
それから少しの間、悠真君も交えて話したりして、露天風呂に入り続けた。悠真君は目の前にいないけど、柚月達が一緒だし、悠真君とも話せたから結構楽しく過ごせたのであった。
ちなみに、夜は……悠真君と一緒に旅館の近くにある足湯を楽しんだり、2人で泊まる部屋でお菓子やテレビを楽しんだり、たくさんえっちしたりして、旅先の夜を満喫したのでした。足湯とえっちはとっても気持ち良かったです!
『温泉ガールズサイド』 おわり
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます