前編3
それからも俺達はスイカを食べ続ける。
全体の10分の1の量だけど、大玉スイカなのでなかなかボリュームがある。ただ、甘くて美味しいからスプーンが進む。難なく完食できそうだ。
「スイカを食べると夏だと思えるのです」
「そうだね、姫奈ちゃん。あたしの家ではスイカをよく食べるよ。夏休みは特に」
「胡桃の家でもそうなんだ」
夏休みになると、スイカを食べる頻度が増える家って多いのかな。
「夏といえば、映画で海へ遊びに行くシーンがあったね」
「ありましたね、千佳先輩。夏休みになったら、みんなで海やプールに遊びに行きたいですね! 私にとっては高校最初の夏ですし、悠真君と付き合ったり、胡桃ちゃんや千佳先輩と仲良くなったりしてから迎える初めての夏ですから……」
結衣はうっとりとした様子に。海やプールに行って遊んでいる情景を思い浮かべているのだろうか。
「結衣ちゃん達と一緒に海とかプールに遊びに行きたいね」
「あたしも行きたいのです。金井高校には水泳の授業がありませんし」
「あたしも行きたいな。泳ぎが得意じゃないから授業がないのは嬉しいけど、一度も入らないのは寂しいし。去年の夏休みは、友達と一緒に海へ遊びに行ったよ」
「そうだったんですか。俺も水泳の授業がないのはいいですけど、一度も入らないのはちょっと寂しいですね」
あと、みんなの水着姿がどんな感じなのかも興味がある。特に結衣の水着姿は。
「じゃあ、夏休みになったら、みんなで海やプールへ遊びに行きましょうね!」
キラキラとした笑顔で結衣はそう言う。結衣の言葉に俺を含めてみんな頷く。もうすぐやってくる夏休みがより楽しみになった。
今の話を知ったら、芹花姉さんや担任の
「新しい水着を買うつもりだから楽しみにしていてね、悠真君」
「うん。楽しみにしているよ」
「あと、姫奈ちゃん達が話していたけど、高校では水泳の授業がないよね。だから、スクール水着姿を悠真君に披露する機会がないなぁ。もし、悠真君にフェチがあるならスク水を新調するけど」
「結衣のスクール水着姿に興味がないって言ったら嘘になるよ。ただ、プライベートで遊ぶんだから、ビキニとかそういう水着姿を見てみたいな」
「分かった。悠真君に可愛いって言われるような水着を買うね!」
張り切ってそう言う結衣。結衣はスタイルがいいし、きっとどんな水着でも着こなせるんだろうな。実際に海やプールで遊ぶとき、結衣がどんな水着姿を披露してくれるのか楽しみにしておこう。
「でも、悠真君にスクール水着姿も披露したいなぁ。胡桃ちゃんのスクール水着姿は見たことあるんだよね? 中学で同じクラスだったから」
「見たことはある」
「いつも、体育の授業は男女別々の場所でやったけど、プールのときは同じだったからね。ゆう君の水着姿も何度も見ていました」
頬をほんのり赤くして胡桃は言うと、俺を見てはにかむ。そんな彼女にちょっとキュンとなった。
中2の水泳の授業があった頃……1学期の間は嘘告白事件もあり、胡桃のことはあまり見ていなかった。ただ、夏休みの間に気持ちが少しずつ復活したので、9月の水泳の授業では水着姿の胡桃を見たことが何度かあった。他の女子生徒よりも可愛くて、大きなものを持っていたな。
「羨ましいなぁ、胡桃ちゃん。悠真君の水着姿を見られて、自分の水着姿を見てもらえるなんて。悠真君の水着姿は夏休みのお楽しみにしておくとして、私のスクール水着姿を悠真君に今見てほしい! 悠真君、いいかな?」
「うん、いいよ。でも、中学の授業で着た水着ってあるのか? 金井高校はプールがないから水泳の授業はないし」
「保管してあるよ」
そう言うと、結衣はクッションからゆっくり立ち上がり、部屋の中にある収納スペースの引き戸を開ける。その中から透明な衣装ケースを取り出す。そのケースの中に水着とかも入っているのかな。
「あった」
結衣は濃い紺色のスクール水着を両手に持つ。中学の水泳の授業のときに、ああいう感じのスクール水着を着ている女子が何人もいたなぁ。
「あぁ、そんな感じの水着を着ていたのです」
「去年の9月以来だけど、もう懐かしいよ。背丈はあまり変わらないし、特に太っていないからたぶん着られると思う」
「そうなんだ」
「あたしも結衣ちゃんのスクール水着姿興味あるよ」
「高校じゃ水泳はないしね。あたしも高嶺ちゃんの水着姿見たいよ」
「じゃあ、さっそく着てみましょうか」
「着替えている間は俺、外に出てるよ」
結衣と2人きりのときならともかく、胡桃達もいるから着替えている間は外に出ていた方がいいだろう。一糸纏わぬ結衣の姿はこれまでに何度も見てきたけど。
「分かった。じゃあ、部屋の前で待っててね」
「ああ」
結衣から承諾を得られたので、俺だけ一旦、彼女の部屋から出る。
中学の水泳の授業で着ていたスクール水着だけど、結衣の水着姿を見られると思うと嬉しいな。まさか、恋人の水着姿を初めて見る場所が、海やプールじゃなくて恋人の部屋になるとは。
「結衣ちゃん、本当にスタイルがいいね」
「羨ましい限りだよ、高嶺ちゃん。特に胸」
「先日、杏樹先生のお見舞いへ行ったときにも言ったのですが、結衣のような胸になりたいのです」
「ふふっ、ありがとうございます」
服を脱いだのか、胡桃達は結衣の体について感想を言っているな。生まれたままの姿を知っているから、話を聞いているとドキドキしてしまう。外で待つのは正解だった。
「あと、結衣ちゃんの肌って綺麗だよね」
「白くて綺麗なのです」
「きっと、高嶺ちゃんは日頃からケアをしっかりしているんだろうね」
「梅雨の時期ですけど、雨が降っている日も紫外線を浴びますからね。紫外線対策のクリームは塗ってますね。悠真君に綺麗な姿を見てほしいですし」
うふふっ、と結衣の楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
胡桃達の言ったように、結衣のスタイルは本当に良く、肌も白くて綺麗だ。それは日頃のスキンケアやマッサージ、ストレッチなどの習慣の賜物と言える。いつまでも綺麗な結衣の姿を見られる関係でありたい。
それから程なくして、部屋の中から胡桃達の『おぉ~』という感嘆の声が聞こえてくる。結衣がスクール水着を着たのかな。
「結衣ちゃん可愛い!」
「高嶺ちゃんはスクール水着姿も様になるなぁ」
「きっと、低田君も『可愛い!』と褒めてくれると思うのです」
「そうだと嬉しいなぁ」
やっぱり、結衣がスクール水着に着替えたのか。
「悠真君、入ってきていいよ~」
「分かった」
部屋の扉をゆっくり開けると、ベッドの近くに紺色のスクール水着を着た結衣が立っていた。スクール水着姿を披露するのが初めてだからか、結衣ははにかんでいる。
「悠真君。どう……かな?」
「よく似合っているよ。可愛いね」
「……良かった」
結衣の笑顔が嬉しそうなものに変わる。胡桃達も「良かったね」と言う。
ピッタリとしたスクール水着だからか、結衣のスタイルの良さがよく分かる。濃い紺色だから結衣の白い肌が際立って。太ももとか腋とかデコルテが美しい。去年まで、水泳の授業で彼女のスクール水着姿を見られた人が羨ましい。この姿を見て彼女に恋をした人もいるかもしれない。
「じっと見つめてくれるのは嬉しいけど、ちょっと恥ずかしいな」
「本当によく似合っているから見惚れてた」
「ありがとう。お礼に写真を撮ってもいいよ。胡桃ちゃん達も」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
俺達はスマホで結衣のスクール水着姿を撮影する。結衣が笑顔で応じてくれるから、凄く可愛い姿を撮ることができた。
「自分の部屋でスクール水着を着て、悠真君達に可愛いって言われて写真まで撮られると興奮してきちゃうな」
「本来の場所以外で着ている姿を見ると……ちょっと厭らしい感じがするかな」
「ふふっ、確かに」
上品に笑いながらそう言うと、結衣はベッドの上で仰向けの状態になる。
「こうすると、もっと厭らしい感じに見えそうだよね」
「……そうだね」
まったく、胡桃達もいるのに何を言っているんだか。結衣らしいけど。
もし、胡桃達がいなかったら、俺はベッドの中に飛び込んでいたかもしれない。そう思えるくらいに、ベッドで横になるスクール水着姿の結衣は綺麗だ。あと、ベッドとスクール水着というミスマッチさが欲を膨らませてくれる。ただ、胡桃達がいるから抑えなければ。
「それにしても、ちゃんと着られたんだね、結衣」
「うん、何とかね。お腹やお尻は大丈夫だけど、胸が少しキツくて。きっと、悠真君のおかげで大きくなったからだろうね」
ちょっとうっとりとした様子で言う結衣。
そういえば、期末試験が終わった日……下着を買うときに、胸が春よりも少し大きくなっていたって言っていたな。それじゃ、去年着ていた水着がキツくなるのも納得か。
「胸が大きくなった以外は特に変わらないなんて。高嶺ちゃんが羨ましいよ」
「同感なのです。胡桃もそんな感じがします」
「ほえっ? まあ、バストは大きくなったけど……油断すると、ウエストがすぐに大きくなっちゃうからね。去年着てたスクール水着は着られないかもしれない。海とかプールへ遊びに行くまでに少しでも痩せないと……」
あははっ、と胡桃は顔を真っ赤にして笑う。パッと見た感じだと……特に太っているようには見えないけど。ただ、胡桃にとっては気になるのかもしれない。
「胸がちょっとキツいけど、悠真君達が似合っているって言ってくれたし、この水着は取っておこうかな」
「それがいいと思う。スクール水着姿を見せてくれてありがとう」
「いえいえ。可愛いって言ってくれて嬉しかったよ」
そう言うと、結衣はベッドから起き上がり、俺にキスする。
結衣はスクール水着姿でベッドに横になると厭らしく感じると言っていた。もしかしたら、意外とすぐにスクール水着姿をまた見られるかもしれないな。
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